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2021.01.07 安全保障

第5次アーミテージ・ナイ報告書について(その2)

將司 覚

本原稿は、「第5次アーミテージア・ナイ報告書について(その1)」の続編となる。

「パートナーシップと連合の拡大」の章では、日米同盟に加え、欧州や海外の同志の国々との協力関係の構築の重要性を説いている。「日本はオーストラリアやインドとの調整によりQuadを率いる新たな役割を担っている。日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、ASEAN防衛大臣会合などアジアにおける共通の利益と価値観を守るためのネットワークの強化にも尽力すべきである」と述べた。さらに、英語圏5ヵ国(英国、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド)で構成する軍事機密情報共有ネットワーク「ファイブアイズ」に加盟し、日本が地球規模での同盟の使命を推進することを主張している。

一方、克服しなければならない課題として日韓関係の緊張を挙げている。「日米韓はさまざまな分野で、建設的かつ現実的に協力する必要があり、日韓両国は過去ではなく未来を見据えて関係強化を図るべきだ」と述べている。「菅首相と文大統領は再出発の機会として次のオリンピックに向けた2国間協力を重要な機会として捉えるべきだ」と提言している。

「経済・技術協力の強化」の章において、アーミテージ氏は「日米経済・技術協力の深化は日米同盟の根幹である」として、「米国はトランプ大統領が離脱したTPPに復帰し、日本と共にルールに基づく経済秩序の維持に努めるべきだ」と米国への対応を求めている。特にG7とアジア太平洋経済協力機関(APEC:Asia Pacific Economic Council)を通じた協力関係の構築の重要性を主張している。また、主要な新興技術(5G、IoT、AI)分野での日米の民間支援等の必要性を強調している。

「結論」では、再び「日米同盟をより対等なものに発展させることは、地域的な問題に対処する上で非常に重要である。日本はあらゆる分野で米国の利益と価値観に最も沿った同盟国である。この報告書は両同盟国が関係を前進させるために優先すべき課題を明らかにしている。東京とワシントンの新政権が世界の安全保障と繁栄のために課題を解決することを切望する」と締めくくっている。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。

將司 覚

実業之日本フォーラム 編集委員
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年からサンタフェ総合研究所上席研究員。2021年から現職。

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