イージス・アショア代替案、イージス艦2隻建造か

2020.12.21

イージス・アショア代替案、イージス艦2隻建造か

政府は12月3日、国家安全保障会議(NSC:National Security Council)の4大臣会合(首相、官房長官、外相、防衛相により外交・安全保障に関する諸課題を戦略的観点から議論する会合)を首相官邸で開催した。2020年6月に秋田県と山口県への配備を断念した地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の代替案として、米ロッキード・マーチン社製のレーダー「SPY7」を搭載したイージス艦2隻(導入コストは約5,000億円以上)を建造するという中間報告をまとめ、月内に与党と協議し閣議決定する見込みだ。

イージス・アショアの配備計画を巡るこれまでの経緯を振り返ってみよう。2017年に北朝鮮がわが国上空通過を含む16回の弾道ミサイルを発射したことを受けて、2017年12月に日本政府はこれらのミサイル攻撃への防衛のため陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の導入を閣議決定した。2018年5月には当時の小野寺防衛大臣が秋田県と山口県を配備候補地であると明言したものの、2019年6月には防衛省の報告書の調査データに誤りが発覚した。また、現地説明会における東北防衛局職員の居眠りも問題となり、当時の岩屋防衛大臣が秋田県知事に謝罪し、再調査の方針を示した。2020年6月、河野前防衛大臣は迎撃ミサイルのブースターが演習場外に落下する可能性があり、問題解決の改修のためにソフト・ハード両面において多額の予算と期間がかかることが判明したとして、2017年閣議決定の「イージス・アショア」の配備停止を表明した。

防衛省は、これまで陸上イージスの主要構成品を洋上プラットホームで活用する方針を表明し、(1)「新型イージス艦」、(2)商船などの民間船に防護能力を付加した「ミサイル防衛専用船」、(3)防護機能を備えた「洋上石油掘削装置(オイルリグ)」方式の案などを検討してきた。「ミサイル防衛専用船」と「オイルリグ」は、防御力、機動性、通信機能など技術的な問題やコストの高騰などから検討の対象からはずされた。最終的に東シナ海、日本海への海洋進出が著しい周辺国の活発な軍事活動に対する警戒・監視任務にも対応できるとして、「新型イージス艦」の建造に落ち着いたようだ。

しかし、新型イージス艦建造についても、いくつかの問題点がありそうだ。装備予定の米ロッキード・マーチン社製のレーダー「SPY7」は、まだ開発途上であり、性能確認試験のための費用や維持管理費用が高騰することも考えられる。米海軍が現在採用している米レイセオン社製の「SPY6」を装備する場合との利害得失を十分検討する必要がありそうだ。また、海上自衛隊の乗組員の確保やイージス艦の運用に資する隊員の資格付与、練度向上のための訓練が必要であり、運用する隊員の確保には困難が伴いそうである。さらに、2020年代中頃までに米国防総省が極超音速ミサイル防衛構想のなかで表明している小型衛星群(コンステレーション)計画(低高度の地球周回軌道に千数百基の監視衛星を配置し弾道ミサイルの監視を行うシステム)とどのように連接するかなどを見極め、効率的な防衛予算の配分を検討する必要があろう。

9月4日、岸防衛大臣は「イージス・アショア」の代替案と抑止力の強化について、菅総理の所信表明及び9月11日の「安倍前総理大臣の談話」を踏まえ、しっかり議論を進め、あるべき方策をとりまとめていくと発表している。2017年の「イージス・アショア」導入の閣議決定後も、周辺国のミサイル技術は進歩を遂げている。日本国民を守るために日本への脅威が具体的にどのようなものなのかをしっかり分析し、それぞれの脅威に対応した防衛システムの構築が望まれる。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。


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