アメリカの日本への原爆投下は「必要なかった」との考えが増加

アメリカの日本への原爆投下は「必要なかった」との考えが増加

第2次世界大戦の終戦直後、ギャラップの世論調査では、アメリカ人の85%が原爆投下を「正当だった」と答える一方、僅かに10%が「正当でなかった」と答えた。ところが2015年のピュー・リサーチセンターの世論調査では、65歳以上の70%が「正当だった」と答える一方、18歳から29歳の若者については「正当だった」との答えは47%にとどまる。

2020年8月6日、ロサンゼルス・タイム誌は、戦後75周年の「広島平和記念日」にあわせ、歴史家ガー・アルペロビッツ氏とジョージ・メイソン大学のマーティン・シャーウィン教授の「アメリカの指導者たちは、戦争に勝つために日本に原爆を落とさなくてもいいことを知っていた。いずれにしても実行してしまった」という論考を掲載した。

二人の主要な論点は、「(1)1945年8月の日本の都市への核兵器使用について、率直に全国的な対話を行う絶好の機会である、(2)原爆により早期に戦争を終わらせ、何十万人もの米国人、そして何百万人もの日本人の命を救ったとの主張は事実ではない、(3)アメリカと日本の公文書から得られた圧倒的多数の歴史的証拠からは、たとえ原爆が使用されなくとも日本は降伏していたと結論づけられる、(4)東郷外相は1945年7月、日本に代わって降伏条件を調停するためソ連に協力を求めようとしていた、(5)鈴木貫太郎首相は、1945年8月13日、「ソ連は満州、朝鮮、樺太だけでなく、北海道も占領するだろう。日本の基盤が破壊される前にアメリカと取引し、戦争を終わらせたい」と考えていた、(6)1945年、米国の8人の5つ星陸海軍将官のうち、アイゼンハワー、マッカーサー、ニミッツら7人は、原爆投下は軍事的に不必要であったか、道徳的に非難されるべきこと、あるいはその両方だったと述べた」であり、従来の「原爆投下による戦争の早期終結への貢献」を否定している。

シャーウィン教授は、かねてから「日本への原爆投下は不必要であった」との主張を展開しており、2002年8月、広島での国際シンポジウムにて、「(1)第2次世界大戦が終わろうとしいていたあの時期に日本の都市に原爆を投下する必然性はなかった。(2)当時のトルーマン大統領とバーンズ国務長官が、戦後ソ連に対し脅しをかけるために、原爆投下を決断したものだった。(3)核兵器さえ保有すれば、戦争に勝利して、アメリカの管理下での平和が保証されるという信念が醸成されてしまった。(4)過去の広島・長崎への原爆投下に関するアメリカ人の議論は、実際には起こらなかった事件によって歪曲されている。日本への原爆投下の教訓が、その後の朝鮮戦争、キューバ危機、ベトナム戦争等での核の使用が抑制されたとの論調がその好例である」とし、第二次世界大戦の早期終結よりも、戦後のソ連との駆け引きや、核兵器を用いた安全保障構想構築が優先されていたなどと力説している。

1945年7月の米英ソポツダム会談では、第2次世界大戦の戦後処理が話し合われた。その時の記録によれば、日本との戦争終結の選択肢は4つあり、(1)本土上陸作戦を行う、(2)皇室維持を条件として、全面降伏、(3)原爆を投下する、(4)ソ連の参戦を待つ、であった。アメリカは、皇室維持という条件を提示すれば、日本が降伏する可能性が極めて高いことを知っていたようである。トルーマン大統領は「日本を降伏させるには原爆投下か本土上陸しか選択肢がない」という強いアピールを行い、「多数のアメリカ兵の命を守るため原爆投下を選んだ」という理由を掲げたが、これは両歴史家の主張の通り事実ではなく、ソ連に原爆の威力を見せつけ、戦後の対ソ外交で優位に立つことが目的だったのかもしれない。

世界の平和は核保有国の核の均衡により保たれているという一面は、冷厳な事実である。しかし、アメリカ国民の考え方が「日本への原爆投下は必要なかった」と変化することや議論が活発化することで、今後の核兵器を含む軍備管理に良い影響を与えていくことを期待したい。


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