クリエイターエコノミー時代の胎動-モノ・コト消費からヒト消費へ-

クリエイターエコノミー時代の胎動-モノ・コト消費からヒト消費へ-

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、外出自粛やテレワークの普及などライフスタイルが大きく変化した。サイバーエージェント<4751>の子会社CyberZ、OENとデジタルインファクトの共同調査によると、2020年のデジタルライブエンターテイメントの市場規模は、140億円に達し、2024年には984億円規模に急拡大することが予測されている。ライブ配信需要の増加に伴い、「クリエイターエコノミー」市場が大きく伸びることが期待される。

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クリエイターエコノミーは、今までは商品の所有に価値を見出す「モノ消費」、商品やサービスを購入することで得られる体験に価値を見出す「コト消費」が一般的であった。しかし、第3の消費方法として、「ヒト消費」というのがクリエイターエコノミーの中核をなすようになってきている。ヒト消費とは、YouTuberへの課金やライバーへの投げ銭など、サービスを提供するヒトに対して行われる消費のことである。以前からあったもので言えば、地下アイドルの応援や、有名アイドルの総選挙などがこれにあたる。デジタル化が進んだことや、コロナ禍により、ライブやイベントなどリアルな体験ができなくなり、ヒト消費のオンライン化が進んだとも捉えることができよう。

例えば、Zホールディングス<4689>は、21年3月にLINEと経営統合し、ライブ配信ビジネスも手掛けている。ライブ配信サービスLINE LIVEでは、ライブ配信者にギフトを贈ることができる。視聴時間やコメント数、応援ポイントなどが点数化されるリスナーランク制度があり、ランクが上がると応援アイテムが追加されるなど他のリスナーと差別化される。リスナーが受け取る対価としては配信者からの認知という承認欲求である。

また、クラウドファンディングを運営するマクアケ<4479>では、応援の気持ちを込めて購入する「応援購入」というものがある。プロジェクト実行者は、ユーザーに「応援購入」してもらう代わりに、金額に応じてものや体験がお返しされるので、ある意味モノ消費、コト消費とも捉えられるが、応援購入が完了したユーザーは、プロジェクトの「サポーター」となり、プロジェクトの成功を見守り、応援する点がただのモノ・コト消費とは異なる。また、プロジェクト実行者が、サポーターまたは応援購入を検討しているユーザーに対して、プロジェクトの最新状況などをアナウンスする活動レポートを掲載しているため、自分が応援したプロジェクトが形になる様子を見ることができる。自分の消費行動が何かを生み出すことに貢献し、それを実感することができるというのも、新しい消費のカタチなのかもしれない。

一方で、クリエイターファーストのサービスも生まれている。イラストやボイスの製作を有償でリクエストできるサービス「Skeb」は、クリエイターがお仕事の合間や即売会の閑散期など、空いた時間に気軽にイラストを描いたり、ボイスを収録することができる場所を目指している。クライアントとのやり取りは「リクエストをもらう」「納品する」の1往復だけになっており、クリエイターの「描く」以外の煩わしさを最小化している。描きたいと思ったリクエストだけを承認することができるほか、すべての著作権がクリエイターのものであるなど、クリエイターが有利になるように設計されている。このようなヒト消費型プラットフォームの登場によりクリエイターエコノミーが活発化してきている。

今年に入り、注目を集めている「NFT」もヒト消費である。NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、偽造が難しく、所有証が明確となっているデジタルデータのことである。デジタルアートのみならず、ツイッター社の共同創設者でCEOのジャック・ドーシー氏による「初ツイート」のNFTが291万ドル(約3億)で落札されるなど話題になった。デジタルデータとして提供されるNFTは、一次販売の場合、コレクション性や購入者の価値観に基づいた価値で取引され、NFTマーケットプレイスで売買される二次流通時は、マーケットの運営者に加えてクリエイター(著作権者)にも手数料という形で収益が入るという。クリエイターを応援するファンなどの消費者にとって、NFTを買うことが、クリエイターを応援することに繋がる。

日本国内では、スクウェア・エニックスHD<9684>やカプコン<9697>がいち早くNFT事業に参入している。また、マネックスグループ<8698>は、国内で初めて暗号資産取引と一体になったNFT取引「CoinCheck NFT(β版)」を手掛ける。その後、GMOインターネット<9449>も、NFTマーケットプレイス「Adam by GMO」を開始することを発表した。国内大手企業も続々とNFT事業に参入しており、漫画・アニメ・ゲームなど、数多くの知的財産を持つ日本において、NFTマーケットプレイスは今後も増加していくことが期待される。

また、フィスコ<3807>とクシム<2345>は、NFTマーケットプレイスの共同開発に着手している。フィスコが開催したフィスココイン(FSCC)スタートアップコンテストで優勝したチューリンガムと、ビジネスアイデア「日本の文化をNFTへ、NFTを世界へ」の実現を目指す。

近年、インターネットの発展で誰でも自由に表現できるプラットフォームが数多く生まれてきた。一方で、簡単に製品やサービス、コンテンツを生み出しやすくなったからこそ、「誰が作ったのか」が重要になってくる。新たなマネタイズによって新たな製品やサービスが生まれ、私たちの消費行動が大きく変化してきている。そうした中で、今後はヒト消費を中心としたクリエイターエコノミーが本格化していくことが見込まれる。


 
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