実業之日本フォーラム 実業之日本フォーラム
2023.04.18 対談

座談会:「戦わずして勝つ」はあえなく失敗、ウクライナの力を見誤ったロシア
JNF Symposium ウクライナ戦争1年、いま見えてきたこと(1)

実業之日本フォーラム編集部

 実業之日本フォーラムでは、テーマに基づいて各界の専門家や有識者と議論を交わしながら問題意識を深掘りしていくと同時に、そのプロセスを「JNF Symposium」と題して公開していきます。今回は、開戦から1年あまりが経過したロシアによるウクライナ侵攻をテーマに取り上げます。陸・海・空の自衛隊OBに、ロシアの戦術評価や日本の防衛力強化への教訓、戦争終結の道筋などについて、複数回にわたって議論してもらいます。(座談会は3月24日に実施。ファシリテーターは実業之日本フォーラム編集委員の末次富美雄)

末次富美雄(実業之日本フォーラム編集委員):まずロシア軍の戦力について伺います。ロシア軍は、冷戦終結後に「コンパクト化」「近代化」「プロフェッショナル化」を基本方針とする軍事改革を進めました。コソボやシリアの戦闘ではその成果が表れたと思いますが、ウクライナ戦争では、逆に軍事改革がロシア苦戦の原因となっているのではないかとの指摘があります。

まず陸軍に関し、渡部さんは今回行われた大隊戦術群(Battalion Tactical Group、BTG)を中心とする戦い方を、どのように考えていますか。

渡部 悦和(わたなべ よしかず)
渡部安全保障研究所長、元富士通システム統合研究所安全保障研究所長、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー、元陸上自衛隊東部方面総監。 1978(昭和53)年、東京大学卒業後、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第二師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。2013年退職。著書に『米中戦争 そのとき日本は』(講談社現代新書)、『中国人民解放軍の全貌』『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)、『日本の有事』(ワニブックスPLUS新書)、『日本はすでに戦時下にある』(ワニ・プラス)。共著に『言ってはいけない!?国家論』(扶桑社)、『台湾有事と日本の安全保障』『現代戦争論-超「超限戦」』『ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛』(ともにワニブックスPLUS新書)、『経済と安全保障』(育鵬社)
(写真=都築 雅人)

渡部悦和(渡部安全保障研究所長):そのテーマに入る前に、ロシアのゲラシモフ総参謀長が提案していた新世代の戦い方、いわゆる「ハイブリッド戦」について述べたいと思います。ロシア軍の改革はハイブリッド戦が基本となっており、最終目的は「戦わずして勝つ」ということです。ですが今回の戦いは、第一次、第二次世界大戦時の、火力戦闘を中心とした戦いとなっています。ハイブリッド戦が適用されず、火力戦闘中心の極めて古典的な戦いになっている。ここがロシア軍を評価する上での一番のポイントです。

大隊戦術群は、コンパクトな部隊・軍隊を作るというゲラシモフの考え方を具現化したものです。そもそもプーチン大統領がコンパクトな軍隊を求めており、編成されたのが大隊戦術群という組織でした。大隊戦術群のコンセプトは、諸兵種連合作戦(Combined Arms Operations)を実施することです。

「諸兵種」とは、戦車部隊、戦車部隊を支える歩兵戦闘車等の歩兵部隊、火力支援する榴弾砲やロケットの部隊、それを支える通信部隊、攻撃するときの障害等を処理するための工兵部隊、そして、防空の部隊――と、戦闘に必要な全ての兵種が含まれたコンパクトな組織です。これが大隊戦術軍、「BTG」です。

BTGは800名ぐらいの規模ですが、ロシア軍は運用がうまくいっていません。その背景として大きく2点指摘できます。1点目は大隊長の能力不足です。あらゆる職種の部隊を効率的に運用して総合戦闘力を発揮することは非常に難しい。
 
例えば陸上自衛隊には、千数百名規模の連隊戦闘団があります。連隊戦闘団指揮官には多くの軍種、職種を束ねる能力が必要です。その能力を身に付けるために、小隊長から中隊長、そして大隊長と各級指揮官を経験させます。そうでないとCombined Arms Operationsは指揮できません。ロシアには、経験豊富で高い能力を持つ大隊長が不足しています。

2点目は、砲兵の運用に関わる失敗で、榴弾(りゅうだん)砲を運用する砲兵部隊をBTGの一部としてしまったことです。これでは効率的な火力支援ができない。陸上自衛隊では、火力支援を「直接支援」と「全般支援」に分けて考えています。榴弾砲を火力支援として使用する場合、一般的には、複数の大隊の火力支援を実施する全般支援で行います。しかしロシアはその方法を取らなかった。一つの大隊に直接榴弾砲を配属し、大隊長の指示で榴弾砲を運用したため、榴弾砲が持つ広範囲の制圧能力が阻害された。

目論見外れの「非戦闘」

末次:ゲラシモフ総参謀長は、「ゲラシモフ・ドクトリン」と呼ばれる戦い方を提唱しています。そのドクトリンでは、「今後の戦争は実際の戦闘は3割で、残り7割はサイバー戦や情報戦といった非戦闘で占められる」と主張していました。しかし実際は、先ほどおっしゃったとおり、火力中心の従来型の戦闘が行われています。ゲラシモフ総参謀長は、ロシアの戦闘全般を調整する立場にありながら、なぜ非戦闘を重視する作戦を実施しないのでしょうか。

渡部:新世代の戦い方は、「戦わずして勝つ」です。それが実現したのが2014年のロシアによるクリミア半島併合で、まさにゲラシモフ・ドクトリンに沿って行われた戦争でした。しかし今回は、ロシア軍、ウクライナ軍ともに火力を発揮する戦闘を実施し、第一次世界大戦時のような悲惨な塹壕戦までやっています。これはロシア苦戦の原因となっています。

これは、プーチンに責任があると思います。プーチンは、おそらく短期で、戦わずしてウクライナ軍を降伏させることができると考え、その想定に基づく兵力配備の下、ウクライナ侵攻を始めたのでしょう。その考えが甘過ぎたということだと思います。

末次:ロシア海軍について、矢野さんはどうお考えですか。

矢野 一樹(やの かずき)
1978年、防衛大学校(22期、電気工学)卒業後、海上自衛隊に入隊。潜水艦指揮課程、米国・国防大学修士課程(国家資源管理)留学などを経て、潜水艦あきしお副長兼航海長、潜水艦ふゆしお艦長、舞鶴地方総監部幕僚長、潜水艦隊幕僚長、大湊地方総監部幕僚長、海幕装備部長、潜水艦隊司令官などを歴任。平成25年(2013年)8月に退官。元海将。三菱重工顧問を経て、現在、日本安全保障戦略研究所上席研究員、防人と歩む会理事長。共著に『中国の海洋侵出を抑え込む─日本の対中防衛戦略』『台湾有事と日本の安全保障─日本と台湾は運命共同体だ』『台湾・尖閣を守る「日米台連携メカニズム」の構築』など。(写真=都築 雅人)

矢野一樹(日本安全保障戦略研究所上席研究員):海軍の立場から見ても、ロシアの指揮系統は軍事改革以前の問題です。誰が部隊を動かす軍令の責任を持ち、誰が外交・政治的に軍を使用する軍政を統括しているのか全く分かりません。独裁的権威主義国家の特徴なのかもしれませんが、戦争をする指揮体系になっていない。

そもそも軍事改革が進捗していなかったのではないか。ロシアは新型装備の比率を2020年に70%とすることを目標にしていました。実際、20年には大量破壊兵器を含む戦略兵器の比率は86%、通常兵器70%の目標をクリアしたと言っています。

しかし、ロシア艦隊全体の状況を見ると、戦略兵器であるSSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)は11隻中5隻が新鋭艦になっていますが、これは目標の半分に届くか届かないかです。SSN(攻撃型原子力潜水艦)も26隻中5隻が新鋭になったに過ぎないので、原子力潜水艦の寿命を40~45年に延ばさないと、隻数の維持ができない状況です。

水上艦艇は、太平洋艦隊で40隻中10隻しか新鋭艦艇はいません。ほとんどは、われわれが現役のときに聞いた艦艇名で、軍隊の近代化がうまくいっていない証左と言えます。準備途上で戦争を始めたというのが実態だと思います。

海上封鎖中止にトルコの影

末次:ウクライナ戦争では、巡洋艦「モスクワ」の撃沈や、係留中の大型揚陸艦の爆破などがありました。こうした中でも注目されるのは、ウクライナからの穀物輸送が継続して行われていることです。穀物輸送が維持されているのは国連とトルコの仲介があったためですが、そもそもロシアの軍事オプションに「海上交通路の破壊」が入っていなかったのではないか。サプライチェーンの寸断によってロシア自身の首を絞めるとか、国際的な非難を受けることを懸念して、海上交通への攻撃や海上封鎖を断念した可能性はないでしょうか。

矢野:ロシアには封鎖の意思はあったんだと思います。当初、封鎖海域を決めて、「許可されない船舶はこの海域に入るな」と宣言もしています。封鎖に当たっては、地理的範囲と期間、中立国の退避期間も示さなければなりませんが、封鎖海域を宣言した昨年2月25日に、退避する間もなく日本の船主が所有しているパナマ船籍の船を含め、4隻がロシアの攻撃を受けて損傷しています。これは明白な国際法違反です。

末次:海上封鎖の意図はあったのに継続できなかったのは、能力的な問題ですか。

矢野:能力の有無というより、黒海という特殊な地理的状況を考えるべきです。黒海の非武装化を目指した「モントルー条約」により、トルコは、黒海と地中海をつなぐボスポラス、ダーダネルス両海峡の軍艦の通過を禁止しています。黒海への出入りのカギを握っているのはトルコであり、ロシアとしてもトルコに強硬なことは言えません。

もし、NATO(北大西洋条約機構)加盟国であるトルコが、この二つの海峡を開放すれば、ロシアの増援艦隊は黒海に入れますが、同時にNATO艦艇も黒海に入れるようになります。どちらがロシアにとってメリットがあるかというと、黒海内に海軍基地を保有し、現状でもウクライナに対し圧倒的に優位な海軍兵力を持つロシアにとって、「いかなる国の軍艦も通峡できない」という現状の方が好都合だと思います。

つまり、黒海で海上封鎖を強引に行うと、「トルコが軍艦往来を制限しているのは、ロシアの海上封鎖を支援するためだ」との国際的批判を受けかねません。トルコがそうした批判を恐れてNATOの海軍艦艇の通峡を許可すれば、黒海内におけるロシアの優位が崩れかねない。そのため、トルコの要請に逆らうことを回避する意味からも、封鎖を続けることができなかったのではないかと私はみています。

財政難で空軍改革は不十分に

末次:封鎖は周辺海域を含む種々の条件を考えなければならないのですね。モントルー条約は黒海の特殊性を示していますが、台湾有事について考える上でも、台湾周辺海域の自然条件や海上交通路としての重要性等を勘案すると、海上封鎖はそれほど簡単ではないように思います。

次に、空軍改革の進捗について伺います。第5世代戦闘機の開発も進んでいますが、今回の戦争では、空軍の近代化の成果が見えないように思います。昨年の台湾有事の座談会では、小野田さんから、ロシア空軍には、「対空制圧」、つまり空軍を攻撃的に使う概念がほぼないという指摘がありました。軍事改革の中で、空軍の役割の見直しは行われたのでしょうか。

小野田 治(おのだ おさむ)
1977年防衛大学校(21期、航空工学)を卒業後、航空自衛隊に入隊。警戒監視レーダー及びネットワークの保守整備を担当の後、米国で早期警戒機E-2Cに関する教育を受け、青森県三沢基地において警戒航空隊の部隊建設に従事。 1989~2000年、航空幕僚監部において、指揮システム、警戒管制システム、次期輸送機、空中給油機、警戒管制機などのプログラムを担当した後、2001年に航空自衛隊の防衛計画や予算を統括する防衛部防衛課長に就任。 2002年、第3補給処長(空将補)、2004年、第7航空団司令兼百里基地司令(空将補)、2006年、航空幕僚監部人事教育部長(空将補)、2008年、西部航空方面隊司令官(空将)の後、2010年、航空教育集団司令官(空将)を歴任し2012年に勧奨退職。 2012年10月、株式会社東芝社会インフラシステム社(現:東芝インフラシステムズ株式会社)に入社。 2013~15年、ハーバード大学上席研究員として同大学において米国、中国及び日本の安全保障戦略について研究。 現在、(一社)日本安全保障戦略研究所上席研究員、(一財)平和安全保障研究所理事、(一社)日米台関係研究所客員研究員、日米エアフォース友好協会顧問 著書に「習近平の「三戦」を暴く」(海竜社、2017年)(共著)「日本防衛変革のための75の提案」(月間「世界と日本」、2018年)(共著)、「台湾有事と日本の安全保障」(ワニブックスPLUS新書、2020年)(共著)、「台湾有事どうする日本」(方丈社、2021年)(共著)、「台湾を守る『日米台連携メカニズム』の構築」(国書刊行会、2021年)(共著)などがある。(写真=都築 雅人)

小野田治(日本安全保障戦略研究所上席研究員):ロシア軍の軍事改革の中心は陸軍だったと思います。ロシアの国家財政は非常に逼迫(ひっぱく)しているので、プーチンは、よりお金をかけずに効率的に軍を再建しなければならないのです。

ソ連が崩壊し、軍の屋台骨が揺らぎました。ロシアは、核ミサイルを搭載可能な戦略爆撃機やICBM(大陸間弾道ミサイル)、原子力潜水艦を保有していますが、これほど大規模な軍を維持できるだけの財政力がない。だから、欧州に攻め入る観点ではなく、欧州から攻め入られたときに、いかに防衛できるかに主眼を置いて軍事改革が行われた。

その中心が陸軍だったのは当然です。空軍はもともと、ソ連時代から地上軍、陸軍を支援する部隊としてスタートしています。米空軍も、同じように地上支援から始まりましたが、第二次世界大戦を通じて大きく変貌しました。なぜなら、彼らは日本と海で戦ったからです。陸軍がいない状況で、空母を使って日本と航空戦を戦った。このことが米軍の変革につながったわけです。

一方、ソ連は、第二次大戦でドイツに攻め入られて、常に地上で戦っています。このため、航空戦もありましたが基本的に地上軍を支援するものとして空軍が存在し、それは現在も全く変わっていない。しかも、外征軍(外に攻めていく軍)の形はほとんどとっていません。技術面や装備品の能力は進化しても、前線の地上部隊を支援する、あるいは上空の航空優勢を確保するといったような役割は、そのままということです。

制空権争いには至らず

末次:よく理解できました。今、ウクライナ上空の制空権、航空優勢(エア・スペリオリティー)をロシア・ウクライナどちらが取っているかと考えると、極めて曖昧です。今後、こういう状況に変化が見られるでしょうか。

小野田:ウクライナ領内に入った多くのロシア空軍機は、地対空ミサイルで撃ち落とされています。このため途中からウクライナ領に入れなくなりました。中高度、高高度はS-300(長距離地対空ミサイル)で迎撃されます。低高度では、今度は「ブークミサイル」という短距離ミサイルや、人が携行するタイプ(MANPADS)の携帯SAM(地対空ミサイル)によって撃ち落とされます。空軍機だけでなく、ロシア陸軍の航空隊が保有している攻撃用のヘリも、ウクライナ領でかなりの数が撃ち落とされています。従って、ロシアは航空優勢が取れていない。

航空優勢を獲得するための作戦自体はあったのです。昨年2月24日の開戦当初、ロシア軍は48時間にわたって航空攻撃をしました。ですが、それによってウクライナ空軍の戦闘機の基地を使用不能にできたかというと、ほとんどできていません。

基地攻撃に際して、重要な目標は滑走路です。2カ所程度爆撃すれば滑走路は使えなくなります。滑走路が使えなければ航空機は飛べませんから、戦闘機を全部つぶす必要はない。しかし、滑走路は早ければ3日、遅くとも1週間で復旧できるので、反復攻撃が必須となります。

この点、後に公開された写真を見ると、ロシア軍は滑走路や駐機場(エプロン)に爆撃を行っていますが、滑走路に当たっていません。精密誘導兵器で攻撃しながら、少し滑走路からずれています。そのため、配備されていたウクライナの戦闘機等は離陸でき、安全な西の方の空軍基地に移動してしまった。結局、最初の48時間の攻撃で8割以上の戦闘機が生き残ったと推定されています。

制空権を獲得する上で、もう一つのポイントは、敵の地対空ミサイルを破壊することです。開戦当初に破壊されたウクライナの防空ミサイルは、先ほど触れたS-300という最も高性能なミサイルでした。S-300防空ミサイルは車両に搭載され、発射機、レーダー車両、指揮通信車両、整備車両、補給車両など多数の車両で構成されるシステムです。日本が装備している防空ミサイル「パトリオット」も、10両以上の車両で構成されています。

敵が襲来するという情報を入手して、攻撃を避けるために移動しようとしても時間がかかります。情報を得てから実際に移動するのに1時間かかってしまうと、被害を受ける確率が高くなる。しかもシステムは多くの車両が揃わないと機能しないので、システムの一部、例えば電源車が使用できなくなっただけでシステムとして動かなくなる。このため、当初のロシア軍の航空攻撃でかなりのウクライナ軍のS-300防空ミサイルシステムが無力化されたという報告があります。

一方、少数の車両で構成されている短射程、中射程の対空ミサイルは機動能力が高く、位置を頻繁に変えますのでほとんどやられていません。典型的なのは、これも先ほど触れた「ブークミサイル」という中射程のミサイルで、車両3両で構成されているため機動性が高く、けっこう生き残って、多くのロシアの戦闘機、Su-24やSu-25を撃墜しています。

米軍の場合、航空制圧は、何週間も時間をかけて徹底的に実施します。移動する目標に対しては、その位置を特定して攻撃する必要がありますが、情報収集が非常に難しく攻撃に時間がかかります。多分ロシアはそこまでの能力を持っていなかったし、やろうとしなかったのではないか。少なくとも彼らがそういう訓練をしていなかったことは確実です。

それから、ロシアは開戦当初1週間でキーウを攻略できると思い込んでいたことは高い確度で言えます。「48時間程度の大規模な航空攻撃を行えばウクライナ空軍は壊滅する」と甘く見積もってしまった可能性があります。

末次 富美雄(すえつぐ ふみお)
実業之日本フォーラム 編集委員。 防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後、情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社にて技術アドバイザーとして勤務。2021年からサンタフェ総研上級研究員。2022年から現職。(写真=都築 雅人)

末次:なるほど。現在は、航空優勢を獲得する争いというより、ロシアに自由にウクライナ上空を使用させないという、ウクライナ軍による「使用拒否(エリアディナイアル)」の状態だと理解しました。

米シンクタンク、CSIS(安全保障研究所)は今年1月、中国による台湾侵攻をシミュレーションした報告書を出しました。同報告書では、日米両国が台湾有事に関与した場合、中国軍によって沖縄の在日米軍基地が攻撃され、被害を受けた戦闘機のほとんどは飛び立つ前に地上で破壊されると見積もられています。日本の有事への示唆としては、小野田さんが指摘されたように、最初の攻撃からいかに戦闘機を退避させられるかが重要な視点だと思います。また滑走路が3~4日あれば修復できるということは、自衛隊も基地機能の回復能力、補修能力を持たなければならないと思います。

(第2回に続く)

実業之日本フォーラム編集部

実業之日本フォーラムは地政学、安全保障、戦略策定を主たるテーマとして2022年5月に本格オープンしたメディアサイトです。実業之日本社が運営し、編集顧問を船橋洋一、編集長を池田信太朗が務めます。

著者の記事