◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の巻頭特集「LONGHASH Japan代表取締役 クリス・ダイ氏インタビュー」の一部である。全8回に分けて配信する。
今年2月に設立されたLONGHASH Japanは、分散型ビジネスモデルを可能にするブロックチェーン活用事業の支援を主軸として設立された注目の企業である。今回はLONGHASH Japan代表取締役社長、クリス・ダイ氏に、ブロックチェーンに代表される分散型ビジネスの将来性やその普及に至るまでの課題なども含めて、お話を伺った。
―ブロックチェーンを切り口にして、今後10年間の推移を占うとして、2028年の時点では、どの程度まで達成されるのでしょうか。たとえば、分散型ネットワークの実現度について、どのようにお考えですか。
IoT(物のインターネットすなわちPCやスマートフォン以外のたとえば車や洗濯機など様々な「モノ」をインターネットと接続して相互制御することで利便性を上げる仕組み)のように、デバイスとデバイスの間で自動的にデータがやりとりされる分散型マーケットプレイスは、実現の可能性が高いとみています。デバイス間であればプログラムで十分に制御できるからです。
サービスやアートの取引など、人間が関わるマーケットプレイスには、10年後の実現を想定するにあたって、不確定要素が大きいと考えています。人間というものは気まぐれで不安定なものであって、合理的でない行動を取ったり、平気で嘘をついたりする人もいる。そして、国や国際機関の規制当局、あるいは既存の機関がブロックチェーンをコントロールしようとするかもしれません。ある企業が革新的な取り組みを行うにしても、社内稟議を通さなければなりません。これらはもはや、技術の進歩だけの問題でなく、人々の意識まで変わらなければ、状況は変化しないのです。
一方で、デバイス間のデータのやりとりに分散型ネットワーク、トークンエコノミーを導入することは、人々の思惑などが介入する余地がありません。そのため、2028年までにデバイス間のデータマーケットプレイスが先に実現する可能性のほうが高いと考えています。
―すでに社会システムができあがっている領域には、ブロックチェーンなどの分散型システムがなかなか入り込めないけれども、まだ開発されていない社会領域には、分散型システムが積極的に入り込んでいくというイメージでしょうか。
そうですね。これから、クリエイティブなことを考える人がたくさん出てきます。
たとえば、東南アジアのマイクロファイナンスで、零細の農家に融資をする場合、家畜以外に目立った資産がない場合には、家畜を担保に入れてトークン化し、流通させることも可能になります。従来の金融機関の立場からすれば、たかが牛一頭を担保に入れたところで、何の足しにもならないって話で、融資の実行を躊躇していたでしょうが、分散型エコノミーのもとでマイクロファイナンスを展開すれば、目立った資産を持たないものの、社会に欠かせない事業を行う層に幅広く融資を実行できる可能性が出てきます。
IoTの事業も非常に可能性がありますね。それぞれの家電がウォレットを持ち、必要な物資やデータを自動的にトークンで購入するようになります。つまり、AIを搭載した家電などの機械がユーザーとして参加し、自律的にデータをやりとりするマーケットプレイス事業にも、大きな将来性があるでしょう。
(つづく~「LONGHASH Japan代表 クリス・ダイ氏インタビューvol.8 分散型システムの活用【フィスコ 株・企業報】」~)