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2020.04.17 安全保障

コロナショックと中国の対外融資

中村 孝也

コロナショックは対外債務の返済に影響を与えつつある。4月15日に公表されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議での声明文には、最貧国のための債務返済の時限的な猶予を支持すること、全ての二国間の公的債権者はこのイニシアティブに参加すること、民間債権者に対し同等の条件でこのイニシアティブに参加することを要請すること、などが盛り込まれた。対象は国際開発協会(IDA)から融資を受けている国と見られ、IDA支援国の対外債務規模は1,000億ドル超に上る。

中国の企業債務も膨大だが、中国による途上国融資も注目されている。IMFによると、低所得国の海外借入残高はGDP比で約2割で、そのうち半分が中国によるものらしい。今回の合意は中国も含めたものとなった点で成功と評価されているようだが、中国にとっては潜在的な不良債権の増加と見ることもできる。地理的に直接的な影響力を行使しづらい国から資金を回収するのも容易でないだろう。

3月31日付WSJは「中国の巨額「隠れ融資」、新興国に債務危機の足音」として、「新興国は中国から推定2,000億ドルを借り入れているもようだが、公式データにはその実態が反映されていない」と報じた。

ラインハートらの「China’s Overseas Lending」によると、中国の対外貸出のうち、約半分がHidden Debt(世銀の報告システムで報告されていない融資コミットメント等)で残り半分がOther debtである。上記の2,000億ドルは2006年時点の推計であり、その後さらに拡大した可能性が高いだろう。

GDP比で中国からの借入が多い国として、ジブチ、 トンガ、モルジブ、コンゴ共和国、キルギスタン、カンボジア、ニジェール、ラオス、ザンビア、サモアなどが挙げられている。これらの国では中国からの借入だけでGDPの2割を優に上回る。上記の上位10ヵ国のうち、ジブチ以外の9ヵ国が前述のIDAに含まれている。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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