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2020.04.09 安全保障

新型コロナウイルス再感染リスクの脅威

中村 孝也

猛威が続く新型コロナウイルスも「夏場になれば終息する」との見方がある。一方で、「再感染リスク」への警戒感も根強い。1918年3月に米国とヨーロッパで第一波が発生したスペイン風邪は、(北半球の)晩秋から第二波が、冬である1919年初に第三波が始まった。

4月7日付サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は「Coronavirus: low antibody levels raise questions about reinfection risk」という記事を掲載した。4月6日にMedRxivに投稿された「Neutralizing antibody responses to SARS-CoV-2 in a COVID-19 recovered patient cohort and their implications」を紹介したものであり、「抗体の水準が低いと再感染リスクが残る」ことを指摘している(リバウンドまたは再感染のリスクが高いかどうかは、今後の課題とされている)。

復旦大学のチームが上海公衆衛生クリニックセンターから退院した175人の患者の血液サンプルを分析した結果、3分の1近くの患者の抗体の力価(医薬品が一定の生物学的作用を示す量)は500未満であった。感染しないためには抗体の力価が低すぎる可能性を指摘している(抗体が検出されなかったケースもあるそうだ)。

抗体の力価の水準は、年齢とともに上昇することも示されている。抗体の力価の低水準の患者のほとんどは若者である。また、60~85歳のグループの人々からは、15~39歳のグループの人々の3倍以上の抗体が検出されている。

中国から感染が拡大した新型コロナウイルスだが、日韓にも拡がり、今では欧米が感染拡大の中心地になっている。東アジアにととまらず、全世界的にヒトやモノの流れが遮断された格好だ。1ヵ国の感染が沈静化しても、他国からの再流入があり、さらに再感染のリスクが残るとなると、その抑え込みは容易でない。グローバルに張り巡らされたサプライチェーンは大きく寸断され、ヒトの行き来の抑制で国内消費も相当の落ち込みが続いている。その寸断、消費の抑制も早くて数ヶ月、1年単位で続くと考え、行動する必要が出てきている。企業の倒産が相次げば金融システムの破壊も進み、リーマン・ショックをはるかに上回る事態に陥ることになる。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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