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2021.02.16 安全保障

企業のビットコイン購入は進んでいくのか

中村 孝也

Crystal Blockchainによると、2020年のビットコイン取引所間取引は918億ドルと2019年の516億ドルから78%増加した。そのうち38%がG20で、セーシェル共和国が43%を占めている。

日本から失われていく暗号資産」では、今後さらに大きな規模で、日本からは暗号資産が失われていくことが見込まれており、デジタル資本の流出を止めるためには、一方的な流出に歯止めをかけるという「デジタル資本吸収戦略」が必要と主張した。日本からのビットコインの流出ペースは年々加速しており、2020年通年も2019年とほぼ同程度の純流出が生じると見込んでいたが、2020年のビットコイン純流出額は8.7億ドルと、2019年の11.6億ドルからは25%減少した。

四半期ベースの純流出額を見ると、2020年10~12月の純流出額は0.1億ドルであった。1~3月が0.9億ドル、4~6月が2.4億ドル、7~9月が5.3億ドルと流出額は拡大傾向にあったが、10~12月はひとまずその傾向に歯止めがかかっている。ただ、価格上昇にともなう一時的な動きの可能性も否定できない。暗号資産の流入が恒常的に期待できる状況になったとまでは評価しづらく、引き続き「デジタル資本吸収戦略」の必要性に変わりはない。

米電気自動車メーカー大手のテスラのビットコイン投資金額は、マイクロストラテジーを上回り、ビットコイン保有金額トップとなった。S&P500株価指数の構成銘柄で4番目に大きく、EV業界をリードする同社の支持を受け、他の企業も追随する可能性を指摘する声がある一方、暗号資産はボラティリティが激しいため、企業資産がリスクに晒される点が懸念と指摘されている。投資の是非の判断は難しいが、16~64歳のインターネットユーザーを対象としたMessariの調査によると、日本の暗号資産保有率は6%程度と、世界平均(約7%)をやや下回る。「暗号資産の普及率」をデジタル化の浸透度と見做すと、日本の改善余地はまだまだ大きい印象を受ける。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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