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2020.09.01 安全保障

外貨準備高の中で輝く金

中村 孝也

金価格が高値圏での推移を続けているが、それは金ETFへの資金流入によって支えられている面が大きい。2020年第2四半期の金需要は前年比11%減の1,015.7t。そのうち投資需要は582.9tで、中でも金のETFおよび類似商品が434.1tと全体の需要の約4割を占めた。前年同期と比較して6倍近くの資金流入である。超長期で見ると、金価格は(GDP比で見た)米国のマネタリーベースと連動しているように見えることから、更なる金価格の上昇を期待する向きも少なくない。地域別に見ると、金ETFへの資金流入は北米が中心である。一方、宝飾品などの消費需要が低迷したことに加えて、中央銀行による買い需要も減少した。

中央銀行による買い需要は減少したものの、それでもこの10年で国の準備金は米国債から金にシフトしてきている。重量ベースで見た世界の中央銀行の金準備高は増加基調にある。2018年以降で見ると、トルコ、ロシア、ポーランド、中国、インドなどが金準備高を増加させた。2010年以降で見ても、金準備高を増やした国はロシア、中国、トルコなどであり、2018年以降で見た時とあまり差はないようだ。

外貨準備高に占める金の割合が高い国は、ベネズエラがトップで82.6%、米国、ドイツ、イタリアなどが70%を超えている。一方、金の割合が低いのは、香港、チェコ、コロンビアなどであり、韓国、日本、中国なども低い部類に属する。アジアの国々は総じて外貨準備に占める金の割合が低く、最近の金価格の上昇を国力の増加につなげきれていない面もある。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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