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2020.07.30 安全保障

貿易を通じてドル流出が継続する日本の存亡

中村 孝也

2020年1~6月の日本の貿易収支は2.2兆円の赤字となった。2020年5月は0.8兆円の赤字、6月は0.3兆円の赤字である。コロナショックの影響がいまだ抜けきっていないと思われる中、5月から6月にかけては輸送用機器の輸出回復が、貿易収支の赤字縮小に貢献した。

もっとも日本の貿易収支は2017年が2.9兆円の黒字、2018年は1.2兆円の赤字、2019年は1.7兆円の赤字であり、徐々に赤字幅が拡大してきている。日本の貿易収支は、食料、エネルギー、原材料などに起因する貿易赤字と、自動車、機械などがもたらす貿易黒字とが綱引きするという構図であるが、後者では前者をカバーしきれなくなってきている点が明確である。

その結果、緩やかではあるものの、日本からは貿易を通じてドルの流出が続いている。2020年1~6月については、日本の輸出の通貨建比率はドル比率が48.3%、輸入の通貨建比率はドル比率が66.5%であった。1~6月の輸出は32.4兆円、輸入は34.6兆円であったので、1~6月は貿易を通じて7.4兆円のドルの流出が生じたことになる。日本はドルのストックが豊富であるため短期的には問題とはなるまいが、長期的な国の存続という観点からは事態は深刻であり、海外から資金を取り込む方策が不可欠である。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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