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2022.07.05 経済金融

活況の海運業界、世界に進出する中国最大手「コスコ」の恐るべき勢い

実業之日本フォーラム編集部

 コロナ禍で続く海上輸送の停滞やコンテナ不足によってコンテナ運賃が高騰している。落ち込んだ各国の経済状況が回復しつつある現在、海上輸送の需要は増え続けており、業界は好況に向かうと同時に国際競争が激しさを増している。

出所:仏海運データ会社Alphalinerによるコンテナ船の用船料チャート

世界の港、貨物量トップ10に中国企業がずらり

 なかでも中国は世界有数の水運大国で、港湾の規模は世界トップクラス。中国国内の港で処理された昨年の貨物は前年比6.8%増の155.5億5000万トン、処理されたコンテナ量は前年比7%増の2億6000万個にまで達した。貨物・コンテナ処理量の多さを見ると世界トップ10のうち7港を中国企業が占めており、上海港が首位となっている。

 中国の海上輸送の船隊規模もここ数年で拡大しつつあり、英調査会社クラークソン・リサーチによると、昨年末時点の中国の海上輸送量は世界全体の15%(首位のギリシャは17%)を占め世界2位。船舶容量の規模も2010年の世界4位から世界2位に上昇。また、総合型水上輸送関連企業の輸送力規模は、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)が世界首位、招商局集団(チャイナ・マーシャンツ)がそれに続く。

 仏海運データ会社Alphalinerによると、昨年の海運企業世界シェア1位はスイスのMSC、2位はデンマークのAPモラー・マースク、3位はフランスのCMA-CGM、4位は中国の中遠海運控股(コスコ・シッピング)と続く。日本企業トップは7位のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)だ。

 以下、海運世界シェア4位、中国最大手のコスコ・シッピング(以下、コスコ)がいかなる企業なのかを見ていこう。

海運業界の市場シェア(2022年7月5日時点)

中国最大手コスコ、世界17カ国に展開

 コスコは業界再編に力を入れる中国政府が作った中国最大の国有海運会社で、2015年に「中国遠洋海運集団」と経営統合し、2017年には香港の同業大手OOCL(東方海外)の全株式買収を通じてその規模を大きくした。「自社所有コンテナ海運事業並びに港湾の運営・管理」を中核事業とし、設備製造、港湾投資やデジタルイノベーションによる付加価値サービス提供等も行う。

 コスコは、ビッグデータの活用で従来のビジネスモデルを大きく変革してきた。たとえば、遠隔監視システム「船視宝」や「クラウドスーパーバイザー(雲監工)」 等、デジタル化を推進・応用することで取得した貨物データや運行状況の全般的な分析・管理を実現するなど、業務効率化や生産性向上に注力している。

 「ピークアウト・カーボンニュートラル」といったグリーンモデル港の建設やボーダーレスな電子商取引プラットフォーム「SynConHub」を立ち上げ、環境に配慮したスムーズなサプライチェーン(供給網)を提供している。欧州や北米、東南アジア、オーストラリア等の地域で使われている「SynConHub」の昨年の取引量は、前年より187%増加しており、中国国内30の省・市・自治区の他に海外の17か国の地域に支店を設置。世界に600か所以上のサービス拠点を有し、今後も拡大予定だ。

 コスコは航路増設やデジタル化による業務拡張を急速に進めており、国内・海外シーレイルトレードレーンを29本新設、中国・欧州 や「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧陸海エクスプレス」のコンテナ量は前年より23%も急増している。さらに、可視化機能付きの物流システムを導入することで物流業務の効率化やコスト削減を実現することができた。

純増8倍で過去最高益、1日あたり50億円もの収益

 中国の税関にあたる海関総署によると、昨年の中国の貨物輸出入総額は39.1万億元(約793兆円)で、2020年より21.4%増加した。そのうち主要港湾のコンテナ取扱量は前年比7%増の2億8,272万TEU(TEUは20フィートコンテナ1個)となり、20年の同比5.8%増加となった。

 また、21年通期業績は輸出増加や海上運賃の高騰、航路を増やしたことによる大幅な増収増益により過去最高を達成。売上高は前年比94.85%増の3336億9400万元(約6.8兆円)、株主へ帰属する当期純利益は前年比799.52%増加の892億9600万元(約1.8兆円)だった。これは過去14年間(2007年~2020年)の収益総額206億8600万ドル(約4195億円)の4.3倍に相当する。

 全体の貨物輸送量におけるコンテナ海運セグメントの割合は前年から2%増加しており、売上高は前年比 97.54%増の 3,279 億 2,700 万元(約6.6兆円)、売上総利益率は前年比 28.71%増の42.34%まで伸びている。

 運営する国際航路(昨年末時点)は前年比6%増の294。停泊する国・地域も105から139に拡大している。同時点のコンテナ輸送量は約26,912千TEU、うち太平洋横断航路は500万TUE、アジア・欧州航路は513万TEU、アジア域内およびその他の国際輸送は1140万TEUと増加した。

「一帯一路」中継拠点港の株式取得

 本決算での港湾運営事業売上高は前年から13%増加しており、海外港湾への出資・買収を継続的に拡大する模様だ。昨年10月にはギリシャ最大の港であるピレウス港の運営会社の株式67%を取得することを公表した。これは中国の広域経済圏構想「一帯一路」に沿った戦略の一環で、地中海の主要な海運中継拠点となる。

 昨年末時点でコスコが投資する港湾は世界37カ所に上り、2020年から1カ所増加している。さらに、220基のコンテナ船を係留可能なコンテナバースを含む計367基の停泊バースも運営しており、年間取扱量目標は141百万TEUだという。

 昨年には輸送能力を増やすため、同グループ傘下の造船会社に大型コンテナ船20隻を新造発注するなど船隊規模を拡充しており、今後も取扱量の増加と安定した収益に期待できそうだ。

景気に左右されやすい海運業界

 石油高による運営コストの増大の影響が大きく、欧米の主要港では依然として混雑が続いている海運業界だが、需要拡大が続けば安定した成長が見込まれるだろう。

 文末に、併せて海運に関連する中国企業の業績をまとめた。

21年通期業績状況(為替レート:1元=20.28円)

企業名売上高純利益主力業務
太平洋航運4048億円1150億円バラ積みを主力とする
中集集団1兆3420億円2300億円コンテナ製造
東方海外2兆2280億円9700億円コンテナ輸送及び物流
中国船舶1兆2130億円43億円造船最大手

※6月30日作成

写真:ロイター/アフロ

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