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2022.05.23 経済金融

中国金融、4大バンク筆頭に業績好調 「預金準備率引き下げ」で中小への融資加速へ
銀行貸出は約10兆円増加の見込み

実業之日本フォーラム編集部

 中国当局は昨年10月、経営危機に陥る不動産大手「中国恒大集団」の乱脈経営などの問題を受け、共産党の汚職摘発機関である中央規律検査委員会に対し、腐敗を撲滅するための「反腐敗調査」を大手国有銀行などの金融機関へ実施することを命じた。

 これにより、調査開始から半年間で少なくとも40名の金融関係者が調査・処分を受け、不動産開発企業向けの貸出に関する贈収賄行為発覚によって多くの経営幹部や管理職が免職処分となった。

 不正発覚が相次ぐ慌ただしい金融業界だが、中国国内の銀行業は堅調に推移している。本稿では中国国内の銀行業績を最新のデータから分析してみる。

業績好調の中国系銀行

 中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は2月11日、2021年末時点の中国国内における商業銀行の運営状況に関する最新データを示し、その運営は安定的でリスク耐性は十分にあると発表した。

 データによると、中国国内で銀行業を行う金融機関の総資産は344兆元(約6400兆円)と前年同期比で7.8%増加した。そのうち中国銀行や中国工商銀行などの大型商業銀行は138.4兆元(約2600兆円)と全体の40.1%を占め、7.8%増加している。また、株式制商業銀行(中堅の民営銀行)は7.5%増の62.2兆元(約1200兆円)と全体の18.0%を占め、純利益は12.6%増の2兆元(約38兆円)となった。

 さらに、小型・零細企業への貸出残高は50兆元(約968兆円)。そのうち与信総額が1000万元(約2億円)以下の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス(金融包摂)の残高(小型・零細企業向け貸出、個人工商事業者向け貸出、小型・零細企業主向け貸出を含む)は、24.9%増の19.1兆元(約368兆円)だった。

 また、商業銀行の不良債権残高は2.8兆元(約54兆円)と昨年9月末から135億元(約2618億円)増加。不良債権比率は1.73%と0.02ポイント低下している。貸倒引当金残高は5.6兆元(約109兆円)で、貸倒引当金カバー率は196.91%となった。

日本と違う「銀行の種類」

 中国国内の銀行は、中国人民銀行(中央銀行)と国有商業銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、交通銀行、中国郵政貯蓄銀行など)、その他の商業銀行(招商銀行、中国光大銀行、中国民生銀行、興業銀行など)、農村部における小規模銀行(農村信用社、農村商業銀行など)に分かれている。

 特に、中国工商銀行(ICBC)、中国農業銀行(ABC)、中国銀行(BOC)、中国建設銀行(CCBC)は「中国4大商業銀行」と呼ばれ、その保有資産は344兆7600億元(約〇〇円)と中国全体総資産の約8割にも及ぶ。

4大銀、合計売上高は約58兆円

 2022年3月末に発表された、中国4大商業銀行の2021年通期業績を見てみよう。

 4行の合計売上高は3兆元(約58兆円)と増収増益を達成しており、純利益は4行とも10%増加した。その中で、預貸の利ざや水準を示す純金利マージンは利払い資産や債権者に対する負債コストへの圧力の緩和によって前年と比較して緩やかな低下となったが、役務取引等利益などの増加によって伸びた非金利収入が全体の収入を押し上げた。

売上高・非金利収入(1元=19.33円)

 売上高(兆円)非金利収入(兆円)伸び率割合
工商銀行16.70(+7.6%)4.906.90%26.70%
建設銀行15.90(+9%)4.3021.60%26.55%
中国銀行11.70(+6.7%)3.5020.29%29.79%
農業銀行13.90(+9.4%)2.8025.70%19.71%

 

不良債権比率は小幅の上昇

 不良債権比率は不動産向け融資の悪化により小幅の上昇にとどまった。なかでも中国銀行の不良債権比率は0.13%減の1.33%と低水準となっている。

不良債権比率・純金利マージン(1元=19.33円)

 不良債権残高(兆円)不良債権比率(前年比)引当カバー率純金利マージン
中国銀行40.401.33%(-0.13%)187.05%1.75%(-10BP)
中国農業銀行47.601.43%(-0.14%)299.73%2.12% (-8 BP)
中国工商銀行57.001.42%(-0.16%)205.84%2.11% (-4 BP)
中国建設銀行51.501.42(-0.14%)239.96%2.13%(-6 BP)

 

 2021年はインフラ、製造業、農村部の活性化、中小企業や農民などへ低金利でリーズナブルな価格でサービスを提供する包括的金融、環境保護の経済活動へ融資するグリーンファイナンスなどへの貸出を増やしており、今年の貸出先も同様だ。また、今年のマネー・サプライ(通貨供給量)の伸びを10%と仮定している。

個人向け「理財商品」、純利益は約193億に

 4行の資産運用管理業績はすべてプラス成長となっており、中国工商銀行の個人向け運用商品「理財商品」を除き、その他3行の純利益は10億元(約193億円)を超えた。そのうち中国建設銀行と中国銀行の理財商品は約5倍増加となっている。

理財商品による純利益(1元=19.33円)

 21年純利益(億円)20年純利益(億円)21年理財商品残高(兆円)
中銀銀行5008933
中国農業銀行33019135
中国工商銀行1747739
中国建設銀行3876442

 

 配当金支払額を純利益で割って算出する配当性向は30%を維持しており、4行全体で3300億元(約64兆円)が支払われた。そのうち、中国工商銀行の配当総額は1045億元(約20兆円)で、首位に立っている。

配当利回り(1元=19.33円)

 純利益(兆円)1株当たり配当金(円)配当利回り
中国銀行1.15(+6.96%)4.258.6%
中国農業銀行1.36(+7.42%)3.878.0%
中国工商銀行1.75(5.71%)5.607.5%
中国建設銀行1.71(6.76%)6.956.4%

※5月11日付けの香港H株終値より作成

預金準備率引き下げで、中小零細企業の資金繰りを支援

 新型コロナウイルス対策の厳格な措置により金融市場の流動性が乏しさを増す中国国内では、低バリュエーション(株価指標)と高配当利回りの銀行株に割安感が強い。

 また、中国人民銀行(中央銀行)は4月15日、市中銀行から法定的に預かるお金を示す「預金準備率」を、4月25日から全銀行を対象に0.25%ポイント引き下げると発表した。これによって約5300億元(約10兆円)の長期流動性が供給されるとみられており、減速する経済を回復させると同時に中小零細企業に対する融資の加速が期待できそうだ。

写真:AP/アフロ

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