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2022.05.17 経済金融

注目の中国家電メーカー「ハイアール」 好調の秘密は独自の海外戦略にあった!
ロックダウン下でも勢いは止まらない

実業之日本フォーラム編集部

 中国で新型コロナウイルスの再拡大が止まらない。特に事態が深刻な上海市では、3月下旬から事実上のロックダウンが続いており、解除のめどは立っていない状況だ。これまでは世界中の製造業サプライチェーンが中国に大きく依存していたが、そこから脱却すべきという声も高まっている。一方で中国政府は内需拡大に向けて軸足を大きく転換し、その効果は良好だ。今回は、その中でも成長が著しい中国家電メーカーを見てみよう。

中国家電市場、コロナ前まで回復

 中国電子情報産業発展研究院が3月3日に発表した「2021年中国家電市場報告書」によると、中国国内における家電市場の21年売上高は前年比5.7%増の8811億元(17兆円)と、ほぼコロナ前の水準まで回復している。特に、洛陽などの経済規模が比較的大きい地方である三線都市やそれ以下の都市、農村地域での売上の伸びは顕著で、前年比8.9%増の2775億元(5.4兆円)と全体の31.5%を占めた。

 また、減収したカラーテレビとエアコンを除いた家電用品は19年の売上高を上回り、販売額は冷蔵庫が前年比7.2%増の1042億元(約2兆円)、洗濯機が7.1%増の788億元(1.5兆円)、キッチン家電が5.0%増の1663億元(約3.2兆円)となった。特に、動きのなめらかさや、表示の遅延が少ないという特徴を持つゲーミングモニターは、ゲームをする若年層を中心に人気を博し、その販売台数は前年と比べて7倍も増加した。

 中国の消費者は、物理的欲求だけではなく品質の高さなどで商品を選ぶ「消費グレードアップ」を求めるようになっており、最近は高性能・高価格の製品を売りだすハイエンド市場が活性化している。コロナ禍で低迷していた家電市場が急速に成長を遂げたのにはこのような背景がある。

「中国市場の8割」を国産メーカーが占めている

 現在、中国の家電市場の約8割を中国家電メーカーが占めており、主要企業は、美的集団(Midea)、ハイアール(Hier)、格力電器 (GREE)、海信電器(Hisense)、長虹電器(Changhong)などだ。

トップ5家電メーカーの2021年第3四半期業績
企業名売上高(億円)増加率主力事業
美的(Midea)51,13020.80%白物家電
ハイアール(Hier)33,05010.10%白物家電
グリー電器(GREE)38,8079.48%白物家電
長虹電器(Changhong)14,16113.17% 白物家電
海信電器(Hisense)9,72043.60%白物家電

 

日本でも好調「ハイアールグループ」

 その中で、現在最も勢いがあると言ってもよい「ハイアールグループ」を紹介しよう。

 84年に創業し、現在は香港・上海・ドイツの3市場に上場するハイアールグループ。中国市場調査会社CHECCの最新データによると、21年の中国家電市場で国内トップの25.1%を占め、過去最高の記録を更新した。また、英調査会社ユーロモニターのランキングでは13年連続世界シェア首位を獲得している。

 主な製品は、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電と小型電気商品で、スマートホームの実現を目的に展開。そのグローバルネットワークは幅広く、世界160か国以上で10か所のR&Dシステムと122か所の工場を持ち、10億人以上のユーザーにサービスを提供する。また、中国の他にアメリカ、日本、オーストラリア、ドイツに研究開発センターを擁している。

 日本市場では、日本国内で設計・開発を行った製品を「ハイアール」と「AQUA(アクア)」の二つのブランドで販売し、なかでも業務用コインランドリーは日本市場トップのシェアを誇る。

ハイアールグループ海外企業との提携
提携・合併企業統合業務内容
1993年日本-三菱重工業業務用エアコン製造の合弁、
「MHAQ」設立
イタリア-メルローニ(現インデシット)ドラム式洗濯機の合弁
1997年オランダ-フィリップス(Philips)カラーテレビの技術提携
ドイツ-ルーセント(LUCENT)カラーテレビの技術提携
1998年米国- C-MOLDソフトウェアの合弁会社設立
1999年日本-東芝(Toshiba)業務用エアコンでの技術提携
2012年ニュージーランドFisher&Paykel冷蔵庫、洗濯機、食器洗い機業務を
全株取得
2015年日本-三洋電機(SanYo)白物事業を買収、「Aqua」設立
2016年米国-GE Appliances家電事業を56億米ドルで買収
2019年イタリア-Candyスマートホームの実現するための
全株買収

 

90年代から「UL規格」を取得

 これまでハイアールグループは、製造技術導入を目的とした海外企業との提携や合併を積極的に行ない、各国で法人を設立し、現地生産を実現してきた。また、現地法人のトップや生産部門、販売部門などにおける重要ポストにはほとんど現地の人材を採用している。

 90年代からは他社ブランドの製品を作る「OEM (相手先ブランドによる製造)」を行わず、米国の安全規格であるUL規格を取得することで、製品の国際標準化を整えてきた。

 このような国際標準に基づいた自社ブランド製品販売によって、他メーカーとの差別化を図り、金額重視のユーザーへ向けたローエンド市場の開拓に成功。近年、グローバル展開にも力を入れており、Casarteブランドを中心にしたハイエンドモデルにおいても高い評価を得ている。現在、中国のHaier/Casarte/Leaderをはじめとして、日本のAQUA、米国のGE Appliances、イタリアのCANDY、ニュージーランドのFisher & Paykel、の7つの家電ブランドを保有、運営している。

「海外向け高級家電」は大幅増収増益を達成

 ハイアールが発表した21年通期決算によると、売上高は前年比15.8%増の2275.6億元(約4.4兆円)で、純利益が47.1%増の130.7億元(約2600億円)となり、増収増益を達成している。

 なかでも、海外市場向けハイエンドブランド事業は48.1%の大幅な増益を実現し、5年連続で36%の年平均成長率を維持。その牽引役とも言えるのが高級家電ブランド「Casarte(カサルテ)」で、40%超の収益押し上げに寄与している。

中国メーカーは世界でシェア拡大を狙っている

 現在、消費飽和状態にある中国家電市場。その中で中国メーカーは、生活や体験をアップグレードしたいというニーズに応えて高付加価値型のハイエンド市場に注力するとともに、豊富な資金力で海外市場ではM&Aを積極的に進め、世界シェアの拡大を狙っている。この両輪の戦略で成長を続けることができるのか、今後の動向に注目したい。

写真:ロイター/アフロ

実業之日本フォーラム編集部

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