南西方面の防衛態勢の足固め

2021.04.21

2021年4月17日、菅総理大臣とバイデン大統領は、初の日米首脳会談を行った。共同声明では、「自由で開かれたインド太平洋構想の推進」が謳われ、ルールに基づかず、国際秩序に反する中国の行動を名指しで非難し、東シナ海での一方的な力による現状変更の試みに反対するとともに、南シナ海での不法な海洋権益主張や活動への反対を表明している。また、沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることを再確認している。さらに、中国が「核心的利益」と位置付ける台湾を巡り「台湾海峡の平和と安定の重要性を確認する」と表明した。
日本では、4月17日、岸信夫防衛大臣は、沖縄県与那国島の陸上自衛隊の部隊を視察し隊員を激励した。岸防衛大臣は、多数の中国軍機による台湾防空識別圏への度重なる侵入事案などを念頭に、「我が国の安全保障にとっても、また、地域の安定にとっても台湾をめぐる中国軍の動静を注視し、南西方面防衛を強化する」と表明した。翌4月18日には、鹿児島県奄美市の陸、海、空自衛隊の各部隊の視察および激励を行い、「中国が南西方面の海空域で活動を拡大、活発化させ、頻繁に海警局の船舶を尖閣諸島の我が国領海に侵入させている。海空軍の活動範囲は東シナ海のみならず、太平洋や日本海にも拡大している。全長1200キロにもおよぶ南西地域の防衛態勢の維持、強化のために、日々精進して欲しい」と訓示した。
2021年4月15日、吉田圭秀陸上幕僚長は、「陸上自衛隊は、離島防衛を視野に、着上陸阻止や市街地戦闘を想定して5月に鹿児島県湧水町と宮崎県えびの市にまたがる霧島演習場を主訓練場として、国内で初となる米海兵隊とフランス陸軍との共同訓練を行う」と正式発表した。吉田陸幕長は、2021年主要訓練の重点の一つとして、米軍以外の多国間連携を進める見込みだ。「フランスは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を担う国だ」とし、今後、日仏陸軍部隊との共同訓練を増やす可能性を仄めかした。また、フランス海軍は、4月5日からインド東方のベンガル湾で、海上自衛隊と米国、豪州、インドのクワッド各国海軍とともに「ラ・ペルーズ」共同訓練を主催している。フランスは、インド洋や南太平洋に海外領土を持ち、中国の海洋進出や力による現状変更に警戒感を示し、脅威認識を共有している。
日米首脳による毅然たる中国の不法行為や力による現状変更の試みに反対し、中国をけん制したことには大きな意義がある。これに加え、クワッドや英仏独なども巻き込み、中国の野心を打ち砕く体制作りが重要であり、共同訓練等により、各国との相互運用性の強化や共同連携要領の向上を図ることは、大きな抑止力に繋がるであろう。日本が米国と連携して南西方面の防衛態勢を固めることにより、中国の台湾周辺における行動をけん制し、クワッド+3の連携強化により南シナ海における中国の強圧的な行動を抑止するという総合作用により中国自らが、南シナ海や東シナ海において実施している高圧的な行動を見なおすことが期待できるのではないだろうか。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚 防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。
写真:ロイター/アフロ


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