中国海警法への対応について(1)

2021.03.02

中国海警法への対応について(1)

2021年2月23日、アメリカ国防総省のジョン・カービー報道官は、記者会見で中国海警局の公船が日本の領海侵入を繰り返していることに対し、違法な行動をやめるよう要求した。「中国が近隣諸国を脅すために海警法を使う可能性がある」と警戒感を示している。尖閣諸島の領海侵入の問題については「日本を支持する」と述べ、中国をけん制した。2月19日には国務省のネッド・プライス報道官は「中国がこの海警法を近隣国脅迫のために使用する可能性がある」と同法を批判し、さらに「米国は日本とフィリピンとの同盟国としての義務を貫く」とも強調した。

中国の海警法が施行されて3週間となる2月21日時点で、中国海警局の公船による領海侵入は、頻発しており、日本漁船に対する追跡事案も2月6日、7日、15日、16日、21日と5回も発生した。中国海警法の中国側の意義は、平時は武器使用を含み強制措置のための権限を付与し、戦時には、第2海軍となる法的根拠を有したことになる。海警局の船舶は海警法を盾に領海侵入や日本漁船追跡事案の増加など、強圧的で横暴な振る舞いをするようになっているように見受けられる。

海警法には具体的な管轄地域が明示されていないものの、12条では「重点保護対象に排他的経済水域、大陸棚、人工島、施設及び構造物」と記述し、南シナ海や東シナ海を意識しているように読み取れる。2016年に仲裁裁判所は「南シナ海における中国の主張は国際法上の根拠がなく、国際法に違反する」と判決を下した。12条の条文が南シナ海のスプラトリー諸島、パラセル諸島や台湾が実行支配する東沙諸島が対象であれば、歴然とした国際法違反である。また、排他的経済水域や大陸棚での権限は、国連海洋法条約に明記された範囲を逸脱している。さらに20条では、「中国当局の承認なしに、建物、構造物を建設した場合、強制撤去権限を持つ」としており、中国以外の立場から見ると、極めて横暴な権限が付与されている。そして、21条には外国軍艦、公船を強制駆逐、強制連行ができると規定し、22条では、主権と管轄が不法侵入、不法侵害などの危機に直面した場合、武器使用を含む一切の措置を取ることができると定めている。

中国の海警法に対し、海上保安庁法20条は、「警察官職務執行法第7条の規定を準用し、事態に応じ、合理的に必要と判断される限度において、武器が使用できる」と定めている。しかし、例外規定として「外国の軍艦や公船は除く」としている。「つまり、中国側からすると日本の巡視船は、絶対に反撃してこない安全な相手」という事になる。中国海警局船舶が不法に侵攻してくる場合、海上保安庁の任務を遂行する上で、また、海上保安官の安全を確保するため、このような例外規定は見直されるべきであろう。

また、事態がエスカレートして海上自衛隊に「海上警備行動」が発令された場合、現行法令では、海上自衛隊への権限付与は、海上保安庁が対処する場合と同じである。すなわち、警職法の範囲で、警察比例の原則に則って対応せざるを得ず、中国海警局船舶による侵入や建物・構造物強制撤去の阻止に有効に機能するかどうか疑問である。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。

提供:第11管区海上保安本部/AP/アフロ


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