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2021.12.30 コラム

新型コロナパンデミック:オミクロン株に対してブースター接種を加速せよ!
東京慈恵会医科大学 浦島充佳

浦島充佳

オミクロン株ではスパイク蛋白部分に桁違いの遺伝子変異が見つかった。そのため、「新型コロナのワクチンがオミクロン株に効かないのではないか?」と危惧された。心配だったら調査すればよい。大事なのは演繹法により得られる仮説ではなく、帰納法により得られるエビデンスだ。

今朝、待ちに待ったそのエビデンスが南アフリカの研究チームにより医学雑誌の最高峰:New England Journal of Medicineに示された[1]。「ファイザー社製のワクチンを2回接種していればオミクロン株による新型コロナの入院を70%予防できる」というものであった。同国のデルタ株に対する同ワクチンの入院予防効果が93%であったことを考えると悪くない結果だ。

またイスラエルの研究チームからも同誌に重要なエビデンスの発表があった[2]。2回のファイザー社製ワクチン接種ではオミクロン株に対する十分な中和抗体を得られない。しかし、「3回目のブースター接種をするとオミクロン株を含むすべての変異種に対してほぼ完璧な中和抗体がつく」というものだった。

日本はブースター接種の素晴らしい効果を知らないのではないか? ファイザー社製ワクチンによる3回目のブースター接種をすると新型コロナによる死亡率が2回の接種と比べて90%も低下する[3]。別の類似研究でも入院を95%、重症化を92%、死亡を81%防いでいた[4](これもファイザー社製ワクチン)。新型コロナは重症化して病床逼迫さえ起こさなければ怖くない。

日本国内でもオミクロン株の市中感染事例が散見される。正月明け頃より急増するかもしれない。しかし、今やるべきことは明白だ。とにかく、3回目のブースター接種を加速することである。かつてWHO事務局長が「テスト、テスト、テスト」といってPCR検査を促した。私は「ブースター、ブースター、ブースター」といって3回目のワクチン接種を促したい。

論文の結果がいずれもファイザー社製ワクチンを使った結果であり、著者は一切ファイザー社とは利益相反を持たない。ファイザー社製ワクチンのエビデンスが多いのは、このワクチンが世界で最も頻繁に使われているためであろう。

浦島充佳

1986年東京慈恵会医科大学卒業後、附属病院において骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。93年医学博士。94〜97年ダナファーバー癌研究所留学。2000年ハーバード大学大学院にて公衆衛生修士取得。2013年より東京慈恵会医科大学教授。小児科診療、学生教育に勤しむ傍ら、分子疫学研究室室長として研究にも携わる。専門は小児科、疫学、統計学、がん、感染症。現在はビタミンDの臨床研究にフォーカスしている。またパンデミック、災害医療も含めたグローバル・ヘルスにも注力している。小児科専門医。
近著に『新型コロナ データで迫るその姿:エビデンスに基づき理解する』(化学同人)など。


[1] Effectiveness of BNT162b2 Vaccine against Omicron Variant in South Africa. DOI: 10.1056/NEJMc2119270 | December 29, 2021

[2] Third BNT162b2 Vaccination Neutralization of SARS-CoV-2 Omicron Infection. DOI: 10.1056/NEJMc2119358 | December 29, 2021

[3] Arbel R, Hammerman A, Sergienko R, et al. BNT162b2 Vaccine Booster and Mortality Due to Covid-19. N Engl J Med. 2021 Dec 23;385(26):2413-2420. doi: 10.1056/NEJMoa2115624.

[4] Barda N, Dagan N, Cohen C, Hernán MA, Lipsitch M, Kohane IS, Reis BY, Balicer RD. Effectiveness of a third dose of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine for preventing severe outcomes in Israel: an observational study. Lancet. 2021 Dec 4;398(10316):2093-2100. doi: 10.1016/S0140-6736(21)02249-2.