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国益とは

国益

国家は、存続のために国益、すなわち「国家的利益」を追求します。国益は、国家としてのアイデンティ ティから発生する欲求をインタレストに具体化するプロセスで形成されますが、大きく「物理的生存」、 「自律」、「経済的充足」、「集団的自尊心」に区分されます。また、現在の国益は、これまでの国際政 治にあったように個別に追求する排他的なものではなく、国家として存在し続けるために国家間の協調を 必要とするサステナブルなものに変化しつつあります。

Wendtによるアイデンティティ

Wendtによれば、アイデンティティとは、動機及び行動の傾向を生み出すアクターの属性であり、アクター の自己認識から生じる、ユニットレベル(国家)の主観的な性質だとされます。この自己認識は、他のア クターも同様に認識しているか否かに左右されるため、アイデンティティは間主観的性質を持ち、自己と 他者とによって構成されることになります。Wendtは、アイデンティティを4つに分類していますが、それ らの概要は下表に示したとおりです

Wendtによるインタレスト

一般的な行為論では、国家は一定の目的を有し、環境を理解し、目的達成に適切な手段を判断して行為を 行うと考えられています。目的を有する国家は、願望と信念に基づき行為することになります。Wendtに よれば、インタレストとはアクターが望むものであり、アイデンティティを前提とするとされ、インタレ ストが願望に、アイデンティティは信念にそれぞれ該当すると考えられています。したがって、両者は行 為を説明するうえで、相互に補完的な役割を果たすことになります。ウェントが分類したインタレストの 概要は下記のとおりです。

国益の確立

国家はアイデンティティに応じた欲求を持ち、それを実現するためのインタレストを確立します。国家を 有機的な存在とみなし、人間の欲求段階の枠組でアイデンティとインタレストとの連接を考察すると、下 図のような関係が成立します。ただし、国家は必ずしも段階的に欲求を満たすわけではありません。上位 の欲求がその国家にとって重要である場合には、下位の欲求が満たされない状況であっても、それを追求 する可能性は高くなります。下図の表中には、アメリカを一例とした場合の内容を記述しています。

日本の国益(一例)

日本の国益も、アイデンティティの区分に応じたインタレストによって考察することができます。下表に示したものは、その一例です。国家は、インタレストを明確にすることで、戦略形成のための目標を設定することが可能になります。