実業之日本フォーラム 実業之日本フォーラム
2020.06.12 外交・安全保障

中国「債務の罠」に嵌るのは誰か?

中村 孝也

中国による対外貸出には様々な推計がある。3月31日付のウォール・ストリート・ジャーナルは「新興国は中国から推定2,000億ドルを借り入れている」と報じたが、RWRアドバイザリーは、2013年以降に中国の金融機関が一帯一路プロジェクトに貸し出したと発表された総額を4,610億ドルと推定している。

ラインハートらによる「China’s Overseas Lending」によると、ラオスは中国からの借入が対GDP比で8番目に高い国である。そのラオスは2020年中に9億ドルの対外債務の支払いが迫っており、2021~23年にかけても毎年10億ドルの債務返済が控えているが、3月末の外貨準備高は約10億ドルに過ぎない。中国に対しては2020年に2.5億ドルを支払う必要があった。世界銀行・IMF(国際通貨基金)による最貧国への債務救済措置要請もあり、当面の対外債務返済はひとまず延期されるが、中国による一帯一路向け融資が将来的に回収可能なのかは疑問も残る。

ただ、中国も強かである。グローバル開発センターによる「Chinese and World Bank Lending Terms: A Systematic Comparison Across 157 Countries and 15 Years」では、中国による融資と世界銀行による融資の条件が比較されている。融資の平均利率は中国が4.14%であるのに対して、世界銀行は2.10%、平均猶予期間は中国が4.8年であるのに対して、世界銀行が7.7年であった。「中国の融資は、特に最も貧しい国々にとって、世界銀行よりも一貫して厳しい条件を課している」と結論付けられた。

そして中国企業も強かである。一帯一路の中パ経済回廊は、620億ドル規模のプロジェクトであり、港湾や道路の整備、パイプライン、数十ヵ所の生産施設、パキスタン国内最大規模の空港などの建設目標を掲げている。「電力セクター監査委員会」の報告書によると、独立系電気セクターだけでも6.25億ドルの損失を計上し、少なくとも三分の一の損失は中国系企業が請け負ったプロジェクトに関わっていたと判明した。火力発電所プロジェクトの建設費用も水増しされていたようである。建設を請け負った華能山東如意電力会社は既に初期投資の約72%を回収し、早々に当プロジェクトからの果実を回収中である。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

著者の記事