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2020.06.11 安全保障

IMFによるコロナショック支援

中村 孝也

コロナショックを受けて、苦境に陥った途上国を支援すべく、IMF(国際通貨基金)による金融支援が積極化している。IMFは100ヵ国以上から緊急融資要請を受けており、資金調達需要を約1,000億米ドルと見込んでいる。Rapid Credit FacilityとRapid Financing Instrumentでは、本格的な構造調整を実施せずに、迅速な緊急支援が提供されている。このプログラムのもとでは、66ヵ国を対象として、236億ドルの緊急支援が実施された。地域別に見た支援額は、アジア太平洋が11億ドル、欧州が10億ドル、中東・中央アジアが70億ドル、サブサハラアフリカが98億ドル、アメリカ大陸・周辺が46億ドルであり、中東・中央アジア、サブサハラアフリカに集中している。個別の国では、ナイジェリア(34億ドル)、エジプト(28億ドル)、パキスタン(14億ドル)、ガーナ(10億ドル)などの支援額が大きい。

また、貧困削減・成長トラスト(PRGT)制度では、低所得の最貧国に無利子融資を提供することが目指されている。170億米ドルの調達が目指されており、日本、イギリス、フランス、中国、スペイン、オーストラリア、カナダなどが資金協力を予定している。

大惨事封じ込め救済信託(CCRT)は、IMFの最も貧しく脆弱なメンバーに助成金を提供するものである。このプログラムのもとでは、26ヵ国に対して、2.3億ドルの債務利払いが免除された。国別には、ギニア(2,240万ドル)、シエラレオネ(1,828万ドル)、リベリア(1,592万ドル)などが大きい。CCRTを14億米ドルに引き上げ、2年間の無償資金協力を提供している。

現状では追加的な金融支援の余裕度はまだ大きそうだが、経済規模が大きい国が支援要請を行うようになれば、その余裕度も低下していこう。実際、国のデフォルトは完全には回避されていない。2020年に入って、すでにアルゼンチン、エクアドル、レバノンのソブリンがデフォルトし、件数は2017年に並んだ。Fitchによると、ガボン、モザンビーク、コンゴ共和国、スリナムの格付けがCCC、ザンビアがCC、エルサルバドル、イラク、スリランカがB-(ネガティブ)とされている。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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