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2020.06.09 安全保障

格下げに遅行してデフォルト率も上昇へ

中村 孝也

コロナショックを受けて社債やソブリン債の格下げが続出したが、足元では格下げの動きは一服しつつあるようだ。それにやや遅行する形でデフォルト率が上昇し始めている。

S&Pによると、世界の社債デフォルトは、2018年が43件、2019年が49件であったが、2020年は既に83件がデフォルトに陥った。既に2009年以来の高水準となっている。米国の投機的格付社債のデフォルト率(12ヵ月平均)は3月の3.5%から4月は4.1%に上昇した。そして、このデフォルト率は、2020年3月の3.5%から2021年3月に12.5%へ上昇すると予想されている。233件がデフォルトに陥り、デフォルト率はほぼ過去のピークに近い水準まで上昇するという見通しである。このメインシナリオに対して、楽観シナリオでのデフォルト率は6%、悲観シナリオでは15.5%と見込まれている。

デフォルト率の上昇は、社債に限定された話ではない。Moody’sは新興国の投機的格付け債券のデフォルト率が、直近の2.2%から2020年末で13.7%へ上昇すると予想している。従来予想は8.3%であったが、大きく上方修正された格好である。コロナショックを受けて矢継ぎ早の金融緩和が繰り出された結果、株式市場では楽観論が支配的なようにも見えるが、決して全てが救われているわけではない。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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