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2020.05.22 安全保障

コロナショックで外貨準備高を減らす国、増やす国

中村 孝也

コロナショックを受けた金融市場でのリスク回避の強まりによって、新興国からの資金流出が加速した。3月の新興国の非居住者によるポートフォリオ投資は833億ドルと、リーマンショック、テーパータントラム(バーナンキ元FRB議長による「量的金融緩和縮小の可能性」示唆)、人民元切り下げの時の資金流出を大きく上回るものであった。

外貨準備高の変動も大きい。IMFによると、2月から3月にかけて外貨準備高の減少が大きかった国は、ブラジル(193億ドル)、トルコ(156億ドル)、インドネシア(95億ドル)、韓国(90億ドル)、香港(78億ドル)などであった。4月もブラジルでは38億ドルの外貨準備高が減少し、トルコでは週を追うごとに外貨準備高が減少している。外貨準備高の減少率が高かった国は、エクアドル(39.1%減)、エルサルバドル(16.7%減)、クロアチア(14.9%減)、トルコ(14.5%減)、ナミビア(10.7%減)などである。総じて脆弱な新興国は、外貨準備高を大幅に減少させてしまったように見える。

一方、外貨準備高の増加が大きかった国は、日本(1,810億ドル)、ドイツ(428億ドル)、フランス(255億ドル)、イタリア(121億ドル)、スペイン(104億ドル)などであった。また、増加率が高かったのは、ルクセンブルグ(226%増)、フィンランド(32.5%増)、ベルギー(20.4%増)、ニュージーランド(19.2%増)、ドイツ(18.1%増)などである。ユーロ圏諸国では(南欧諸国を含め)外貨準備高が増加した国が多かったが、それは新興国から資金が流出する中、為替防衛のために外貨準備高を消費せずに済んだという効用も指摘できそうだ。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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