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2020.05.13 安全保障

外貨準備が急減するトルコ

中村 孝也

トルコリラの下落が続いている。対ドルでのトルコリラ相場は、5月7日に2018年安値を下回った。トルコの外貨準備高は、2013年をピークに2018年まで減少が続いてきたが、2019年にはやや持ち直していた。2月28日時点では774.13億ドルあったが、コロナショックによる新興国からの資金流出を受けて3月以降急減し、5月1日時点では514.57億ドルとなった。2019年9月末時点での対外債務残高4,334億ドル(ドル建て比率は59.2%、短期対外債務比率は26.9%)と比較すると、外貨準備高の水準は心許ない。

トルコの経常収支は2010~19年平均で4.1兆円/年の赤字である。同期間の貿易収支は6.2兆ドル/年の赤字であった。2019年は輸入減少の影響などから久方ぶりの経常黒字を記録していたが、2020年に入り、1~3月は貿易赤字が続いている。輸出構成比では、自動車・同部品、機械機器、鉄鋼などの構成比が高く、輸入は鉱物性燃料、機械機器などの構成比が高い。2018年の鉱物性燃料の輸入は4.7兆円、食料品(未加工、加工)の輸入は1兆円程度と見られる。

高金利を背景に海外からの資金を引き付けてきたトルコだが、恒常的な経常赤字構造を変えることができておらず、投資家のリスク許容度が低下する局面で、その脆弱性が顕在化した格好となった。浮上するIMF支援要請観測に対して、エルドラド大統領は否定的な発言を繰り返す一方、3月27日には「米連銀は(トルコを含む)全てのG20 加盟国とドル・スワップ協定を結ぶべき」と訴えているが、これまでのところ奏功していない。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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