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2020.03.11 外交・安全保障

海外企業の中国撤退シナリオ

中村 孝也

これまでに中国に投資を進めてきた企業にとって、新型コロナウイルス禍は中国リスクを再認識させることになった。2月28日に公表された東京商工リサーチのアンケート調査によると、新型コロナウイルス問題に「対応を取る可能性がある、対応を取っている」と回答した日本企業2,638社のうち、974社が「中国以外に所在する企業からの調達強化」、200社が「中国への新規進出計画の凍結・見直し」、104社が「中国拠点の撤退・縮小」と回答した。

他方、2月27日に公表された在中米国商工会議所による在中米国企業を対象としたアンケート調査によると、コロナウイルスが中長期的な経営戦略に与える影響について、55%の企業が「判断には時期尚早」、34%は「影響なし」と回答する一方、6%が「投資の先送り、キャンセル」、4%が「中国からの一部あるいは全部の移管」、2%が「中国市場から撤退」と回答した。

数はまだ限られるものの、新型コロナウイルス禍は、海外企業による中国撤退シナリオの蓋然性を高める方向に作用している。2月23日、ピーター・ナヴァロ国家通商会議議長はフォックステレビに出演し、「今回の新型コロナウイルス危機で、私が政権内ですべき職務はサプライチェーンを見直すことだ」、「米国は製造工程をオフショアに頼りすぎているので、オンショアに戻さなければならない」、「コロナに限ったことではない」、「中国には断固とした態度で臨む必要がある」などと述べている。

その中国では、2月の中国政府版製造業PMIが35.7と、過去の最低値の38.8(2008年11月)を下回ったことが注目を集めた。(前年比で見る)GDPと(前月比で見る)PMIは次元が異なるという点を認識した上で、敢えて両者の関係を試算してみると、2月単月のPMIの数値は、GDPでマイナス4%成長ぐらいの瞬間風速ということになる。3月のPMIが2月と同水準であれば、1~3月はゼロ成長という印象だ。

なお、リーマンショック当時の2008年10~12月のPMIは平均41.5であり、その水準から想定されるGDP成長率はプラス0.7%ぐらいであったが、実際には7.1%成長と公表された。この環境下で当時のような無理が働くとはさすがに想像しづらいが、実際にどういった数字が4月17日に公表されるかは、また別の議論が必要ということかもしれない。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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