『「第四次産業革命」を生き抜く』は、世界経済フォーラム創設者兼会長のクラウス・シュワブ氏による著書であり、「1800年以来、めざましい発展により無数の人々の生活の質は劇的に高まった。これからも人類の発展が続いていくことを第四次産業革命は私たちに強く確信させる」と主張している。書籍では、国連開発計画によるOECD加盟国についての人間開発指数のデータを活用し、各種の技術が成長、健康、教育の成果にどう影響したのかを示し、各産業革命がクオリティ・オブ・ライフを継続的に高めていたと結論づけている。
2017年時点においては、人間開発のレベルに対して第二次産業革命の技術システムによる寄与は8割程度を占めていた。それに続くのが第三次産業革命の技術システムである。第四次産業革命の技術システムによる寄与は2010年頃から始まったが、その規模は極めて限定的である。もっとも2050年までに実現する便益は、第三次産業革命以前の技術システムによるものはほぼ横ばいと見込まれている。それでも人間開発のレベルが上昇していくのは、第四次産業革命の技術システムによる寄与が増えていくためである。第四次産業革命が、今後の人間開発の水準向上のほぼすべてを担うことになる。
人間開発指数とは、所得水準や経済成長率など、国の開発の度合いを測るためにそれまで用いられていた指標にとって代わるものとして導入されたものであり、長寿で健康な生活、知識へのアクセス、一定の生活水準における前進を評価する総合指数である。1990年に創刊された人間開発報告書のために、パキスタン人の経済学者であるマブーブル・ハックがノーベル経済学賞受賞者であるアマルティア・センなど専門家の協力を得て考案したものである。長寿で健康な生活は平均余命によって、知識へのアクセスは成年人口の平均就学年数と入学年齢児童の予測就学年数、生活水準は2011年の購買力平価ベースのドル価による1人当たり国民総所得によって測られる。