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2020.11.27 外交・安全保障

4つの観点から見る金融システムの安定性

中村 孝也

FRBの「Financial Stability Report」では、(1)資産価格、(2)企業・家計の借入、(3)金融セクターのレバレッジ、(4)調達リスク、の4つの観点から金融システムの安定性が評価されている。半年毎に作成されており、直近のものは11月9日に公表された。前回5月の報告書では金融システムの脆弱性に対して強い警戒感が示されていたが、今回は以下の通り、総じて楽観的な評価が目立つ印象である。

資産価格については、株式市場のバリュエーションは大幅に上昇し、PERはヒストリカルなレンジのほぼ上限に位置している。一方、イールドスプレッドは5月以降低下し、過去平均から大きく離れておらず、投資家のリスク選好はレンジ内にある。資産価格の上昇は低利回りを反映している可能性が高く、リスク補償の指標は過去の基準とほぼ一致しているという評価である。

借入については、企業のレバレッジが20年第2四半期末に20年ぶりの高水準となった。金利は低下したものの、新型コロナによる業績悪化の影響が大きく、インタレストカバレッジレシオ(収益と支払利息の比率)は大幅に悪化した。レバレッジドローンのデフォルト率は上昇しているが、格下げの動きがQ2からQ3にかけて鈍化し、Q3はパンデミック前の水準に戻ったことから、予想デフォルト率について「5月より上昇リスクは低下した」と言及されている。

レバレッジについては、2020年前半のブローカー・ディーラーのレバレッジ比率は、低位で安定して推移した。ヘッジファンドのレバレッジ比率は「過去レンジの上限にある」との評価で、2~5月にレバレッジ引き下げの動きが目立ったが、5~8月に引き上げの動きも見られたとのことである。調達リスクについては、銀行の資金調達リスクは依然として低く、20年第2四半期までの預金流入の急増の恩恵を受けたと評価されている。

また、今回の報告では、気候変動リスクが初めて取り上げられた。自然災害で被害を受けた不動産価値の急激な変化などを含め、深刻で突然の荒天が市場の大幅変動につながる可能性に触れた上で、FRBは新たな「経済的不確実性とリスク」として地球温暖化を捉えつつあると説明している。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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