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2020.11.25 安全保障

中央銀行デジタル通貨の誕生

中村 孝也

10月20日、バハマ中央銀行はデジタル通貨「サンドダラー」を発行し、世界初の中央銀行デジタル通貨が誕生した。10月28日には、カンボジア国立銀行がデジタル通貨「バコン」を正式に発行し、世界で2番目の中央銀行デジタル通貨となった。10月に深センで実施されたデジタル人民元の実証実験では、5万人の市民にデジタル人民元が配布され、130万ドル分のデジタル人民元が利用されている。国際決済銀行(BIS)による調査では、世界66ヵ国・地域の中央銀行のうち、全体の1割が3年以内、2割が6年以内にデジタル通貨を発行する可能性が高いと回答している。「各国が前向きになってきた中央銀行デジタル通貨」でも述べた通り、デジタル通貨に対するスタンスも積極化している。

IMF(国際通貨基金)の「Digital Money Across Borders: Macrofinancial Implications」は、デジタル通貨について、(1)クロスボーダー決済のためのニッチな利用、(2)一部の国での普及、(3)世界的な単一グローバルステーブルコインの導入、(4)少数の主要な中央銀行デジタル通貨とグローバルステーブルコインの間での激しい競争を特徴とした多極化する世界、という4つのシナリオのもとでの潜在的な影響について議論している。

同レポートでは、経済危機や大規模な政変時に外貨導入のスピードが速くなる可能性が指摘されている。通貨代替を経験した25ヵ国については、当初は外貨の使用が制限されていた国でも急速に外貨の使用が開始され、外貨預金が預金残高に占める割合が2年で1桁台から30%を超えるまで上昇するそうだ。そして、家計や企業の間で習慣化が進むため、10年後も当初より高い水準の比率が維持されている。中央銀行デジタル通貨の浸透は、少なくとも国内で意外に早く進むのかもしれない。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。