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2020.11.04 安全保障

「外貨準備高―ドル債務」と「経常収支」で判断する新興国の脆弱性

中村 孝也

IMF(国際通貨基金)のデータによると、世界の外貨準備高に占める米ドルの割合は、長期的に低下基調を辿ってきたが、コロナショック直後の2020年第1四半期に61.79%と前四半期比から1%ポイント強上昇した。しかし、その後の落ち着きもあり、2020年第2四半期に61.26%と、再び低下へ転じている。

コロナショックを境に外貨準備高を減らした国は、トルコ、サウジアラビアなどである。一方、イスラエル、スイスでは自国通貨安介入の結果、外貨準備高が増加している。新興国の脆弱性を判断するためには、IMFが公表しているAssessing Reserve Adequacyなどが使われることも多い。これは各国に必要な外貨準備高の目処として「輸出×10%+ブロードマネー×10%+短期債務×30%+その他債務×20%」などで算出されたものである。外貨準備高がAssessing Reserve Adequacyを下回る国は小国に多いが、上記のトルコもその中に含まれている。中国は外貨準備高の水準は高いものの、Assessing Reserve Adequacyとの比較で十分な外貨準備高と評価されていないようだ。

新興国の脆弱性を判断するために、「外貨準備高―ドル債務」と「経常収支」で新興国を4つのカテゴリーに分類した。経常赤字であり、外貨準備高よりもドル建て債務が大きく、経常収支が赤字という脆弱性が高い国は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、インドネシア、メキシコ、南アフリカ、トルコ、ウクライナである。外貨準備高よりもドル建て債務が小さいが、経常収支が赤字の国は、チェコ、インド、ポーランドなどである。このうちインド、ポーランドは相対的に経常収支赤字の水準が高いことから、脆弱性の高まりが懸念されよう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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