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2020.10.13 安全保障

燻る新興国からの資金流出懸念

中村孝也

新興国の金融環境は総じて落ち着いている。ドル建て債券のスプレッドは、パンデミック前の異常とも言える低水準には届いていないが、総じて縮小傾向にある。2020年9月の「BIS Quarterly Review」で対象として取り上げられた15ヵ国のうち、6月12日時点と比較してスプレッドが拡大したのはトルコのみである。また、コロナショックを受けて、ドル建て債券ファンドからは資金が流出したが、年央以降にその半分以上が戻ってきた。

もっとも一部には不安も見られるようだ。現地通貨建て債券のスプレッドは、ドル建て債券のスプレッドと比較すると低下幅は限られていることに加え、ブラジル、中国、インド、ロシア、トルコ、南アフリカ、ハンガリーではスプレッドが拡大した。現地通貨建て債券ファンドは、コロナショックでドル建て債券ファンドと同様の資金流出に見舞われたが、依然として資金の戻りは鈍いままである。

国際金融協会のデータによると、9月の非居住者ポートフォリオのフローは、新興国市場の債券が129億ドルの純流入であったのに対して、株式は108億ドルの純流出となり、債券と株式の資金フローの乖離が拡大している。9月最終週の高頻度取引による新興国市場からの資金流出は、2013年の「テーパータントラム」にほぼ匹敵したものであったらしく、「米大統領選の先行き不透明感がリスク回避を助長し、新興国市場から投資家が退出しようとしている可能性がある」と指摘されている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村孝也

株式会社フィスコ取締役
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。