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2020.10.08 外交・安全保障

一様ではない新興国の回復

中村 孝也

コロナショックで新興国の金融環境も大幅な悪化を余儀なくされたが、その後は落ち着きを取り戻しつつあるようだ。中国を除く新興国では、新規債券の発行が急増した。外貨建債券の発行は2019年通年の8割程度に達している。ソブリン債についても、2019年と比較してさほど減少した様子は見られず、順調な発行が続いている。スプレッドも縮小傾向にある。一定の格付けがあり、外貨建での発行であれば、さほど高いスプレッドは要求されないようだ。

もっともコロナショック前と比較すると、相応の警戒感は残っているようだ。新興国企業の債務のほとんどは外貨建での発行であり、ブラジル、マレーシア、ロシア、タイなどでは、自国通貨建て債券の需要は限定的である。

また、今後の格付け見通しにも警戒感が残る。S&Pが公表している格下げ可能性を見ると、8月の東欧・中東・アフリカの格下げ可能性は5年、10年平均を下回り、中国の格下げ可能性は過去の平均値に近い。しかし、中国を除く新興アジアの格下げ可能性は41%と、7月の36%から上昇し、5年、10年の過去平均を上回った。また、中南米の格下げ可能性は5年、10年平均を上回る高水準である。以上からは、コロナショック以前のように新興国が一様に回復するという展望は、なかなか描きづらいところであろう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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