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2020.10.01 外交・安全保障

「日中デカップリング」が痛いのは中国か、日本か?

中村 孝也

米中対立は依然収まる気配を見せておらず、西側諸国の経済圏から中国を切り離すという「中国デカップリング」の可能性も完全には否定しづらくなってきたようにも感じられる。仮に「日中デカップリング」が実現した場合に、経済的に悪影響が大きいのはどちらであろうか。

まず、マクロ面から眺めると、中国の経済規模は日本の3倍程度に上る。日本にとっての中国は相応に大きいが、中国にとっての日本はそれほど大きいわけではない。中国による日本からの輸入依存度は8.3%であるのに対して、日本による中国からの輸入依存度は23.6%である。もっとも何らかの品目が「戦略物資」として、相手国経済に対するチョークポイントとなっている可能性も考えられるため、もう少し精緻な分析が必要であろう。産業構造審議会の分科会では製品の類型毎に精緻な議論を求めており、総会でも「新たな危機にも柔軟に対応できるよう、まずは、日本の産業競争力上、戦略的な製品・資源やそのサプライチェーンの把握を進めるべきではないか」との提言がなされた。
HSコードの97の「類」を対象にすると、中国による日本への輸入依存度が20%超の類は16、輸入総額で380億ドルであった。金額が大きいのは、「鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品」、「鉄鋼」、「精油、レジノイド、調製香料及び化粧品類」などである。比較のために、中国による米国からの輸入を見ると、輸入依存度が20%超の項目の類は4、輸入総額で85億ドルである。

他方、日本による中国からの輸入については、輸入依存度が20%超の類は52、輸入総額で2.3兆円(210億ドル)である。40%超で金額が大きいのは、「電気機器及びその部分品並びに録音機、音声再生機並びにテレビジョンの映像及び音声の記録用又は再生用の機器並びにこれらの部分品及び附属品」、「原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品」などである。その全てが「戦略物資」というわけではないだろうが、それでも日本による中国への依存度の高さが目立つ。この観点からは、現状での「日中デカップリング」は中国よりも相対的に日本に痛手なようにも見受けられる。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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