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2020.09.29 外交・安全保障

明暗分かれる米中直接投資

中村 孝也

Rhodium Groupによると、2020年上期の米中間の直接投資およびベンチャーキャピタル投資は109億ドルと、2011年下期以来の低水準まで落ち込んだ。2016~17年の半期400億ドルというペースと比較するとピーク時の4分の1の水準である。

2020年上期の中国による米国への直接投資は47億ドルと、2016年の260億ドル超と比べると20分の1程度と圧倒的に少ない。2019年上期の34億ドル、下期の13億ドルから回復したものの、テンセントによる出資(34億ドル)の寄与が大きく、それを除けば、過去10年間で最低水準である。Rhodium Groupによると、2020年下半期の投資は、上半期の水準以下に抑えられそうだ。米大統領選挙の結果は安全保障規制の強化に向けたトレンドを変えることはできないだろうが、行き過ぎた警戒感が和らげば、戦略的ではないセクター(消費財・サービス、娯楽、ヘルスケア、商業用不動産など)への投資は回復するかもしれない。

一方、米国による中国への直接投資は41億ドルと、2019年上期の59億ドルからは31%減少し、過去10年間で最低水準となった。いくつかのプロジェクトの建設が既に完了したことに加えて、10億ドルを上回るM&Aがなかったことが影響しているようだが、延期されたM&Aや進行中の投資は継続中であることから、さらなる急減は考えづらそうである。消費成長の鈍化や、中国のサプライチェーンへの過度な依存への懸念、政治的圧力などを考慮して、投資計画を再評価している企業もあると見られるが、ベンチャーキャピタルやその他のポートフォリオ投資に対する米国投資家の意欲は依然として高い。もっとも米国の強硬路線に対して、中国における米国企業が人質に取られる可能性はリスクでもあろう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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