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2020.09.16 外交・安全保障

米中デカップリングの経済的影響

中村 孝也

9月7日、トランプ米大統領は、米国が中国との取引をやめたとしても米国が失うものはないと述べ、米中経済の「デカップリング」について改めて言及した。Bloomberg Economicsはデカップリングを貿易やテクノロジーの流れが遮断されることと定義し、米中デカップリングが現実のものとなれば、中国、米国の2030年の成長率はそれぞれ4.5%から3.5%に、1.6%から1.4%に下がると分析した。

デカップリングによる成長率の低下幅は、米国が0.2%ポイントであるのに対して中国は1.0%ポイントと、中国の悪影響が大きいと見込まれている。これは、米国よりも中国の方が技術、アイデア、イノベーションを海外から導入しなければいけないことが主たる背景と指摘されている。

上記は米国と中国という2ヵ国のデカップリングであるが、米国側に複数の国が同調するという「コーディネートされたデカップリング」のケースについても試算されている。日本、韓国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、イギリス、カナダという8ヵ国も米国に同調して中国からデカップリングする場合には、中国の成長率は4.5%から1.6%まで低下することが見込まれている(ちなみにコロナショックに見舞われた2020年のGDPはIMF予想によると+1.0%成長である)。

「米国の成長率とさほど変わらない」との見方もできようが、中国は「中所得国の罠」を体現してしまうことになる。中国に変わって新たに世界経済の牽引役となる国もなかなか見当たらず、世界経済全体が低成長というイメージはますます強まることになる。1%台という低成長率が国民の不満を高めないかという点も気にかかるところであろう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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