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2020.09.15 外交・安全保障

アメリカによるドル供給トリアージの範囲は?

中村 孝也

3月のコロナショック直後に、FRBは矢継ぎ早に金融政策を打ち出した。ドル不足への対応としては、3月15日のFRBと主要5中銀との「米ドル・スワップ取極を通じた流動性供給を拡充するための協調行動」、3月19日のその他9中銀へのドル流動性スワップライン拡大、3月31日のFIMAレポファシリティ開設、が相次いで実施された。FIMAレポファシリティとは、FRBが海外の中央銀行にドルの流動性を供給する暫定的な措置である。米国債売却に代わるドルの調達手段であり、米国債を担保としてオーバーナイトでドルを調達することにより、参加行は一時的に米国債をドルに交換することができる(ロールオーバーも可能)。自国通貨を担保に差し入れる通貨スワップとは異なる。当面は6カ月間の時限措置とされていたが、7月29日には2021年3月末までの延長が決められた。

FIMAレポファシリティは、4月6日からオペレーションが実施されているが、これまでのところ使用実績はほとんどない。ただ、いくつかの海外中銀は、FIMAレポファシリティに言及している。例えば、インドネシア中央銀行が4月9日に公表した「Latest Economic Developments and BI Measures against COVID-19」では、「必要であればレポによる600億ドルの調達が可能」と説明された。また、7月9日には、「スリランカ中央銀行の副総裁は、スリランカは10億ドルのレポファシリティをオファーされていると述べた」と報じられた。7月24日に、スリランカ中央銀行は、FIMAについてニューヨーク連銀と合意した旨をプレスリリースで公表している。アメリカによるドル供給の可能性は、これらの国にとって一定の安全弁として機能したと見られる。

もっとも、FRB側からはFIMAレポファシリティについて、追加的な説明が極めて限られる。FIMAレポファシリティの対象は「ニューヨーク連銀に口座を持つ200以上の中央銀行や国際機関など」とされており、広範な国が恩恵を受けられる様にも見受けられるが、具体的な対象国は判然としない。また、通貨スワップ協定、ドル流動性スワップラインと同様、認可、拒否の裁量はFRBに握られている。通貨下落に悩まされているにもかかわらずFIMAレポファシリティに言及できない国は、担保となるべき米国債の保有が極めて限られる国なのか、あるいは米国が支援すべきでないと考えている国なのか、などと考えるべきなのかもしれない。


(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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