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2020.09.11 安全保障

着実に進展してきた人民元決済と残された課題

中村孝也

中国人民銀行は、「2020年人民元国際化報告 」を発表した。その中では、人民元のクロスボーダー決済は急速な成長を維持しており、クロスボーダー決済総額に占める人民元決済の比率が過去最高を更新したことが明らかにされている。

2019年のクロスボーダー人民元決済総額は前年比24.1%増の19.67兆元であった。その結果、クロスボーダー人民元決済総額はクロスボーダー決済総額の38.1%と、2018年から5.5%ポイント上昇した。経常収支勘定でのクロスボーダー人民元決済総額は前年比18.2%増の6.04兆元であり、こちらもクロスボーダー決済総額に占める割合は16.1%と、2018年から2.1%ポイントの上昇が実現した。

2019年の香港とのクロスボーダー人民元決済の割合は44.9%で、シンガポール(10.3%)、ドイツ(3.4%)などが続いた。このうち、香港、シンガポール、マカオ、英国、オランダ、アイルランドの構成比は2018年と比較して上昇した。これらの国・地域との取引において、着実に人民元の活用は進展していることがうかがわれる。

一方、課題として残るのが、一帯一路沿線国とのクロスボーダー決済における人民元の活用である。一帯一路沿線国とのクロスボーダー人民元決済総額は2.73兆元(32%増)で、貿易に関する決済が7,325億元(19%増)、直接投資に関する決済が2,524億元(12.5%増)、クロスボーダー金融に関する決済が2,135億元であった。クロスボーダー決済総額に占める割合は13.9%と、2018年から僅か0.8%ポイントの上昇にとどまっている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村孝也

株式会社フィスコ取締役
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。