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2020.09.01 安全保障

暗号資産の普及率と国の信用力

中村 孝也

暗号資産の普及率はこれまでのところ公式な統計が存在しないことから、いくつかの機関がアンケート方式での調査を行っている。例えば、Statista Global Consumer Surveyは、65ヵ国を対象に、暗号通貨の使用または所有を調査したものである。それによると、暗号通貨の所有と使用の割合が高い国は、ナイジェリア(32%)、ベトナム(21%)、南アフリカ(17%)、トルコ(16%)、ペルー(16%)などであった。

ちなみに昨年の上位国は、トルコ(20%)、ブラジル(18%)、コロンビア(18%)、アルゼンチン(16%)、南アフリカ(16%)などである。ナイジェリア、ベトナム、ペルーなどで急速に普及していると見られることから、暗号資産の普及率と国の信用力との間には一定の関係がありそうだ。その他の主要国については、米国が7%、中国が8%、日本は4%の普及率と、大きな変化は確認できない。

他方、FRBによる「Survey of Consumer Payment Choice」では、3,363名の回答者のうち、ビットコインを保有していると回答したのは35名であった。ビットコインの普及率は1.0%ということになる。普及率は2014年の0.4%から上昇が続いてきたが、2018年の1.2%からは若干低下することとなった。保有動機については、56%が「投資」、23%が「新技術への関心」と回答した。一方で、「商品やサービスの購入のため」、「匿名の支払い」、「銀行を信用していない」、「政府を信用していない」などの回答は限られていたようである。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。