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2020.06.23 外交・安全保障

中国のアキレス腱、エネルギー自給は可能か?

中村 孝也

中国のエネルギー自給率は2016年時点で80%であるが、石油は63%を輸入に依存する。中国の原油輸入は、2009年の2.5億トンから2018年は4.6億トンに増加した。中東から44%、アフリカから19%、ロシア・CISから16%を輸入している。

中東やアフリカからの輸入は、インド洋、南シナ海を航行する必要があるが、現段階で同地域はアメリカの支配下にあるため、米中関係がこれ以上緊張すると、調達環境に影響が出てくる可能性がある。そのため中国は、シーレーンでのプレゼンスを高める行動を取るとともに、ミャンマーやパキスタンなどからバイバスすることを模索している。また、ロシアからなど内陸からの調達により、シーレーンを回避する調達の多様化を進めている。

結果として、天然ガスの輸入は2009年の76億㎥から2018年には1,213億㎥へと大幅に拡大した。そのうち26%をオーストラリアからのLNG輸入で、38%をロシア・CISからのパイプライン経由での輸入で実現し、パイプライン建設に注力している。ミャンマー、中央アジアA~C線に加えて、2019年12月にはロシアからの「シベリアの力」が開通した。シベリアの力で年間380億㎥のガスが中国に供給されるが、2本目となる「シベリアの力2」の事業化に向けて調査開始が発表されている。こちらの年間輸送能力は最大500億㎥とされている。

エネルギー自給率が80%ということは、エネルギー消費を20%抑制することができれば、マクロ的にはエネルギーの国内自給が達成できる。これは年率4%程度のスピードでエネルギー消費を拡大させてきた中国にとって、そう簡単ではない。2020年1~2月の電力消費は前年比7.8%減少した(3月は同4.2%の減少)が、コロナ禍でもこの程度である。それを上回る電力消費削減は容易ではない。単純化すれば、経済規模を20%縮小させるか、エネルギー効率を20%改善させるか、あるいはその組み合わせが必要となる。

ただ、トップダウンの政策が浸透しやすい国でもあり、全く不可能というわけでもないのかもしれない。非常事態であれば、なおさらである。それが実現できれば、シーレーンへの依存度を引き下げることができるだろう。底値からはやや反発したが、年初来のエネルギー価格下落も、もし継続するのであれば、少ない外貨でより多くのエネルギーを調達することにつながるだろう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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