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2018.07.26 特別寄稿

投資家のモメンタムは底堅い
仮想通貨のゆくえと日本経済vol.5

中川 博貴

◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年春号 −仮想通貨とサイバーセキュリティ』(4月28日発売)の特集『仮想通貨のゆくえと日本経済』の一部である。また、8月3日発売予定の書籍『ザ・キャズム~今、ビットコインを買う理由~』(フィスコIR取締役COO/フィスコファイナンシャルレビュー編集長 中川博貴著)のダイジェスト版となる。全14回に分けて配信する。



ビットコインは、この世に誕生してからまだ10年も経過していない。2017年に最大20倍以上に膨れ上がったビットコインの価格を見て「中世オランダのチューリップ球根以来のバブル」だと評する声もあったが、これはバブルなのだろうか。ビットコイン投資に機関投資家が本格参入している今、その将来性を悲観するのは早計であろう。貨幣の歴史そのものに立ち返ることで、仮想通貨の本質的価値とその未来、これから日本経済が進むべき道を探る。


仮想通貨の価値は、なぜ上がるのか


もはやビットコインは、一部の人の意図では「殺せない」


自国の通貨の信頼性が、危機的な状況に追い込まれている国民の間では、比較的安全な資産の逃避先としてビットコインが選ばれている。金融危機国の為政者たちにとって、非中央集権的な通貨であるビットコインは邪魔な存在と見えるに違いない。だが、分散型台帳というビットコインの特殊性が、その規制を極めて困難なものにしている。

もちろん、規制する法律を作ることは可能だし、ビットコインの所持や取引などの行為に罰則を定めて「違反者」を取り締まることもできる。だが、仮にビットコインの取り扱いを極めて厳格に規制したところで、しばらく混乱があるかもしれないが、その後は規制をかいくぐったり、取引が闇に埋もれたりするといった裏展開が待っているにすぎない。いくら、仮想通貨の流通を人為的に止めようとしたところで、いったん世界中に普及した流れを簡単に逆回転させられるはずがない。

中国では取引所での仮想通貨の取引が禁止され、取引所も閉鎖されたが、仮想通貨の取引をしたい人々は個人的に結びついて、ゆるやかなコミュニティの中でやりとりしている。また、取引所を閉鎖された経営者の中には、一定の規制の下で仮想通貨の取引所を開設可能な日本などに新天地を求める人も多い。為政者の管理下に置かれず、為政者の都合で「殺す」ことができない通貨が、ついに誕生したと言っていい。


投資家のモメンタムは底堅い


IT系ニュースサイトのVenture Beatによるアンケート調査によれば、「なぜ、仮想通貨に投資するのか」という質問に対して、「長期投資のため」と答えた投資家が複数回答ながら90%を占めている。また、「2018年、仮想通貨への投資を増やしたい」との質問には、77%がYesと、「デジタル通貨は今後5年間で実体経済に浸透するか」との問いにも、65%がYesと答えている。多くの投資家が仮想通貨に注目し、投資意欲を抱いているようだ。

なお、今後の仮想通貨経済を引っ張る国として挙げられたのは、日本が27%で回答数1位となった。おもに欧米諸国の投資家に聞いてのアンケート結果で、日本の名が最も多く挙がったことにも注目すべきだろう。


「デジタルゴールド」とゴールドの比較


各国の法定通貨と異なり、政府による価値の裏付けからは独立している点でも、ビットコインと金は似通っている。また、自国の法定通貨が不安定となっており、信用したくてもできない人々において、大切な資産を守ってくれる事実上の「デジタルゴールド」として、ビットコインは価値保存の役割を担っている。

経済学者のウィレム・ビュイターは、「金は6000年の間、プラスの価値を維持しており、人類の歴史の中で最も長く続くバブルを作った」と述べている。今でこそ、電子機器部品の製造に欠かせないレアメタルとして利用されている金だが、歴史的には長い間、何らかの実用性が認められたわけではない。かろうじて宗教的・政治的権威などを示す装飾品、奢侈品としての役割が期待されていたにすぎない。

価格は常に不安定で、上にも下にもオーバーシュートする傾向がある。よって、短期的には金の取引で損失を出す投資家も大勢いる。しかし、100年単位、1000年単位で見れば、確実に価値は上昇しているのである。

もし、6000年も続くバブル相場がこの社会に存在しうるのであれば、たった数年の歴史しかない現在のビットコイン相場を見て「バブルだ」「バブル崩壊だ」などと非難することに、はたしてどれほどの意味があるだろうか。


(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.6 ビットコインの価格高騰はバブルではない【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)



フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジグループ代表 白井一成
フィスコIR取締役COO 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。

中川 博貴

株式会社クシム代表取締役
フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の設立メンバーとして当時より参画。 公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。 環境省「持続可能性を巡る課題を考慮した投資に関する検討会」委員(2015〜2017)。 IR専門誌「フィスコファイナンシャルレビュー」編集長(2017〜2019)。 著書に「ザ・キャズム 今ビットコインを買う理由」がある。

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