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2021.01.13 外交・安全保障

暗号資産投資の意義(2):デジタル資本革命

中村 孝也

暗号資産投資の意義(1):デジタル法定通貨の普及」では2020年がデジタル法定通貨誕生の年であり、デジタル通貨に対する世界の中銀のスタンスも積極化しつつあることに触れたが、今回は「デジタル資本革命」について述べてみよう。

過去20年間のインターネット革命は、情報交換のコストの劇的な低下が情報の伝播する範囲を極限まで広げ、ごく少数の人にしか必要としていない情報までもが流通するようになった。今後起こることは、インターネットに分散・分権された台帳とスマートコントラクトにより、エージェンシーコストとカウンターパーティリスクが消滅し、金融における価値交換のコストの劇的な低下が、価値交換が可能な範囲を極限まで広げることだろう。インターネット革命で情報産業は大きく生まれ変わったが、今般の革命では経済の血液である金融が大きく生まれ変わり、経済のあり方そのものを変えるに違いない。

中央銀行の法定通貨であるナローマネーと、非中央集権的で通貨に近い性質を有する金などを合算すると44兆ドル規模となる。こういった非デジタル通貨で80兆ドルの世界GDPを支えているのだとすると、ブロックチェーン上に保管されていく8兆ドルの世界GDPを支えるためには4.4兆ドルのデジタル通貨が必要と試算される。現状のナローマネーと金の構成比を踏まえると、そのうち3/4がデジタル法定通貨、1/4が非中央集権デジタル通貨で分け合うというのが基本感となろう(ビットコイン、イーサリアムなどは非中央集権デジタル通貨に含まれる)。そして、実体経済を従来の金融市場が支えているのと同様に、デジタル経済を支えるための暗号資産金融市場も本格的に立ち上がる。その総額は85.7兆ドルと試算される。

このような世界観の一部は、既に現実化しつつあるのかもしれない。暗号資産の時価総額は既に1兆ドルを上回る。また、世界30中銀のベースマネーが25兆ドルであるのに対して、ビットコインの時価総額は0.7兆ドルである。4万ドルのビットコイン価格を前提とすれば、スイスに次ぐ世界で7番目のベースマネーという規模感である。昨秋時点ではロシア(9位)と韓国(11位)の間に位置していたことを想起すると、その躍進ぶりがうかがえる。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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