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2020.04.28 外交・安全保障

自然災害とコロナショック

中村 孝也

エーオンの調査によると、2019年の自然災害による経済的損失は総額2,320億ドルであった。トップは日本の「10月台風」と中国のモンスーン洪水(6~8月)であり、経済的損失はそれぞれ150億ドルであった。日本からは「10月台風」の他にも、「9月台風」(100億ドル)が第3位の自然災害とされた。1900~2019年についても、トップは日本の東日本大震災(2011年、2,650億ドル)であり、第2位が阪神大震災(1995年、1,030億ドル)であった。トップ10にはランクインしていないが、2016年の熊本大地震による経済的損失も410億ドルと小さくない。日本の自然災害の多さを再認識させる結果と言えるだろう。

防災白書によると、1948~2018年の日本では(死者及び行方不明者の合計が50人以上の)風水害は91件、主な地震災害は60件、それぞれ発生した。対象となった71年のうち、どちらも発生しなかったのは15回にとどまる一方で、そのうち25回は風水害と地震災害の両方が発生した。単純計算では、ほぼ8割の確率で風水害か地震災害のいずれかが発生し、35%の確率で両方が発生することになる。「今年、自然災害は起こらない」と決めつけるのは、あまりにもリスクが高い。

3月22日、クロアチアでは新型コロナウイルスの感染が広がる中、マグニチュード5.5の地震が発生した。現地では厳しい復興作業となっており、地震と感染の両方に苦しめられている。新型コロナウイルスの感染者の推移に目を奪われがちであるが、自粛活動を要請される中、日本でも自然災害が発生しないとは限らない。さらなる「想定外」を招かないためにも、最悪の事態に備えたシナリオプランニングが求められよう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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