エーオンの調査によると、2019年の自然災害による経済的損失は総額2,320億ドルであった。トップは日本の「10月台風」と中国のモンスーン洪水(6~8月)であり、経済的損失はそれぞれ150億ドルであった。日本からは「10月台風」の他にも、「9月台風」(100億ドル)が第3位の自然災害とされた。1900~2019年についても、トップは日本の東日本大震災(2011年、2,650億ドル)であり、第2位が阪神大震災(1995年、1,030億ドル)であった。トップ10にはランクインしていないが、2016年の熊本大地震による経済的損失も410億ドルと小さくない。日本の自然災害の多さを再認識させる結果と言えるだろう。
防災白書によると、1948~2018年の日本では(死者及び行方不明者の合計が50人以上の)風水害は91件、主な地震災害は60件、それぞれ発生した。対象となった71年のうち、どちらも発生しなかったのは15回にとどまる一方で、そのうち25回は風水害と地震災害の両方が発生した。単純計算では、ほぼ8割の確率で風水害か地震災害のいずれかが発生し、35%の確率で両方が発生することになる。「今年、自然災害は起こらない」と決めつけるのは、あまりにもリスクが高い。
3月22日、クロアチアでは新型コロナウイルスの感染が広がる中、マグニチュード5.5の地震が発生した。現地では厳しい復興作業となっており、地震と感染の両方に苦しめられている。新型コロナウイルスの感染者の推移に目を奪われがちであるが、自粛活動を要請される中、日本でも自然災害が発生しないとは限らない。さらなる「想定外」を招かないためにも、最悪の事態に備えたシナリオプランニングが求められよう。
(株式会社フィスコ 中村孝也)