4月21日に日銀金融システムレポートが公表された。日本経済新聞では「新型コロナの影響に焦点を当てた」と紹介されたが、単純に1~3月の金融市場の変動を紹介しているだけの印象が強いレポートである。ちなみに前回10月レポートは98ページであったのに対して、今回のレポートは44ページにとどまる。
金融機関の有価証券投資にかかる評価損益については、ヒアリング内容として「2020年3月以降、内外株価下落や海外クレジット・スプレッド拡大に伴ってリスク性資産の評価損益が大きく悪化したものの、海外金利の大幅低下に伴う債券評価損益の改善によって相当程度補われたかたち」と言及された。
ヒートマップでは、前々回のレポート以降、「不動産業向け貸出の対GDP比率」の過熱状態が続いていることに加え、今回は、前回レポート時点で「緑」だった「総与信・ GDP比率」が、1991年初以来はじめて過熱に転じた。直接的には分母に当たるGDPが減少したことの影響であるが、より本質的には分子に当たる総与信が、それ以前から趨勢的にGDP対比で高めの伸びを続けていたことが影響していると分析されている。
1~3月の金融市場の変動に焦点を当てたというのは、IMF(国際通貨基金)による金融脆弱性レポートも同じである。こちらのヒートマップでは、Worstを1、Bestを5とすると、半年前との比較ではユーロ圏でソブリンが2→1、銀行が3→2、保険が3→4に変化した。また、アセットマネージャーの項目では、米国と中国は1、その他新興国は4と評価されている。
(株式会社フィスコ 中村孝也)