新型コロナショックによる経済への悪影響が鮮明化しつつある中、多くの国が財政政策を強化しつつあり、日本でも来週には緊急経済対策が取りまとめられる。財政政策を公表することによるセンチメント効果は一定程度存在したであろうが、財政政策の規模感は足元の危機に歯止めをかける上でどの程度有効であろうか。
「パンデミックによる経済的影響【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」では、3/2に発行された「The Global Macroeconomic Impacts of COVID-19: Seven Scenarios」を紹介した。その中では、7つのシナリオに応じた経済への影響度が試算されている。シナリオ1~3は疫学的事象が中国に孤立することを、シナリオ4~6は各国で疫学的ショックが発生する(一時的な)パンデミックを、シナリオ7は軽度のパンデミックが無期限に毎年再発することを、それぞれ想定したものである。
スペイン風邪を念頭に置いたシナリオ6の「パンデミックシナリオ」では、GDPの7~9%程度の悪影響が見込まれている国が多い。一方、シナリオ7の「再発シナリオ」では、GDPの1~3%程度の悪影響がずっと積み重なるイメージとなる。
「新型コロナウイルスと経済の関係」では、スペイン風邪のようなパンデミックが発生すればGDPを10%ほど押し下げても不思議でなく、経済成長率がリーマンショック当時のものを割り込む蓋然性が高いとの見方を提示したが、上記のシナリオ6に近しい数値である。
これまでのところ、景気刺激策の規模はGDP比10~20%という国が多いようだ。その点ではひとまず十分な対応が検討されていると言えるのかもしれない。他方、真水部分は、米国は1桁後半である一方、欧州各国は1桁前半と見込まれる。日本でも「リーマンショック後の対策を上回る金額」が言及されているが、2009年4月の「経済危機対策」の事業規模は56.8兆円、うち真水部分に相当する財政支出は15.4兆円にとどまった。その点ではやや不足感も感じられよう。財政政策が始動するまでのスピード感も課題である。
(株式会社フィスコ 中村孝也)