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2020.03.25 外交・安全保障

2019年米国人権報告書

中村 孝也

米国国務省の「人権報告書」では、海外各国を対象として、個人の人格の尊重、市民の自由の尊重、政治プロセスに参加する自由、政府の汚職と透明性の欠如、人権侵害の疑いに対する国際機関および非政府機関の調査に対する政府の姿勢、差別・社会的虐待・人身取引、労働者の権利などが評価されている。

3月11日公表の「2019年人権報告書」では、「恣意的逮捕または留置・拘留」に関する言及量は、中国が2,043単語、香港が530単語、日本が959単語であった。言及量は「香港<日本<中国」の順である。2018年の言及量は、中国が1,671単語、香港が333単語、日本が727単語であり、言及量が全般的に増えた。日本は「原則はあるけれど・・・」という書き方が多い一方で、中国はほぼ「全面否定」に近い。香港に関する記述は前回まで非常に簡潔であったが、デモの影響もあり、説明がかなり増えている。日本の項では「カルロス・ゴーン事件」に関する記述も登場した。

「恣意的逮捕または留置・拘留」に関する冒頭の言及については、日本は「法律は恣意的な逮捕と拘留を禁止。市民社会組織は、民族のプロファイリングと外国のイスラム教徒の監視を終了するよう警察に促し続けた」、中国は「恣意的な逮捕と拘留は依然として深刻な問題。法律は、公安職員に広範な行政拘禁権限と、正式な逮捕または刑事告発なしで長期間個人を拘留する能力を認めている。弁護士、人権活動家、ジャーナリスト、宗教指導者および支持者、および元政治囚とその家族は、恣意的な拘留または逮捕の標的にされ続けた」とされた。前年と大きな変化は見られない。

一方、香港は「法律は、恣意的な逮捕および拘留を禁止し、法廷で逮捕または拘留の合法性に異議を申し立てる人の権利を規定しており、政府は一般にこれらの要件を遵守」とされた。その後、前年は「政府は一般にこれらの要件を遵守」と記述されていたが、今回はその部分が削除され、「抗議に関連して、恣意的な逮捕のいくつかの主張がなされた」という言及に変わっている。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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