新型コロナウィルスの猛威が続いている。過去の○○ショックでは、様々な構造変化がもたらされた。例えば、95年の阪神淡路大震災では、神戸港のハブ機能が失われ、その後も需要が戻らなかった。08年のリーマン・ショックでは、セール・イベントによってブランド物の価値が低下してしまう一方、プリウスが流行るといったような消費者行動の変化が確認された。また金融機関への風当たりも非常に強くなり、規制強化に舵が切られたのもこの頃である。11年の東日本大震災ではサプライチェーンの重要性が認識される、各企業がBCM (Business Continuity Management)の導入を進める一方、当時の円高環境も影響し、企業の海外移転が加速した。その後、円安が進行する一方で日本からの輸出は期待されたほど戻らなかったが、その一因として、日本の設備投資ストックが海外に流出してしまったことが指摘されている。
それでは今回の新型コロナ・ショックでは、何がもたらされるのであろうか。感染を防ぐために、テレワークを推奨する企業が増えている。これまでのような押し付け型、紋切り型の「働き方改革」ではなく、真の「働き方改革」が台頭する可能性もあるだろう。来るべき5G時代もそれを支援していよう。
また、デジタル化にもプラスに働くだろう。中国人民銀行副総裁は、感染拡大を防ぐため、現金の衛生管理を行う方針を示し、市中から現金の回収を始めた。人々が直接接触する頻度が急減する中で、短期的には企業や個人は紙幣の使用を控え、電子決済への依存度を高めている。これが習慣化されれば、汚染リスクのないデジタル通貨の導入が促される可能性があろう。折しも世界的に金融緩和への期待感が強まっている。法定通貨がさらに切り下がれば、仮想通貨の魅力は相対的に高まるだろう。
これまでに中国に投資を進めてきた企業にとって、今回の出来事は中国リスクを再認識させるきっかけとなったはずだ。「チャイナ・プラス・ワン」という考え方も定着しつつある。中国からの資本引き揚げが進めば「中国の成長の終わり」など新しい時代が来る可能性も出てこよう。
写真:AP/アフロ