2020年1月21日には、日銀、ECBを含む6つの中央銀行は、中銀デジタル通貨の発行を視野に新しい組織を作ると発表した。2月12日に、日銀は、分散型台帳技術に関する共同調査プロジェクト「プロジェクト・ステラ」の第4フェーズ調査結果を公表。自民党からも「デジタル円発行に向けた提言を、政府の骨太の方針に盛り込むように求める」と報じられている。日本はデジタル通貨の発行に消極的であったが、少し風向きが変わってきたのかもしれない。今回は「デジタル通貨の規模感」を考察してみよう。
2015年9月に世界経済フォーラムが公表したサーベイレポート「Deep Shift: Technology Tipping Points and Societal Impact」では、「技術に関する21の転換点」がいつ訪れると経営者や業界専門家が見ているかをまとめている(調査時点は2015年3月、回答数は816件)。そこでは、57.9%の回答者が「2025年までに世界GDPの10%がブロックチェーン上に保管される」と見ていることが明らかとなった(なお、その時点ではブロックチェーン上のビットコイン価値は世界GDPの0.025%であった)。当報告書の影響力は強く、それ以降、ブロックチェーンの規模は「世界GDPの10%程度」というのが一つの定見となっているようだ。
中央銀行の法定通貨であるナローマネーと、非中央集権的で通貨に近い金(ゴールド)などを合算すると44兆ドル規模となる。こういった非デジタル貨幣で80兆ドルの世界GDPを支えているのだとすると、ブロックチェーン上に保管されていく8兆ドルの世界GDPを支えるためには4.4兆ドルのデジタル貨幣が必要と試算される。今のビットコイン時価総額は1,900億ドル程度なので、その23倍の規模感のデジタル貨幣が生み出されていくことになる。これを「法定デジタル通貨」と「非中央集権的なデジタル通貨」でどのように分け合っていくかが注目されよう。