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2019.12.11 特別寄稿

韓国は日本にとって抱き込んでおきたい相手
韓国の安全保障を分析する vol.3

実業之日本フォーラム編集部

フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジ グループ代表 白井一成
アイスタディ代表取締役 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

【フィスコ世界経済・金融シナリオ会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部から多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、アイスタディの代表取締役である中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまでにも今後の中国経済、朝鮮半島危機、第四次産業革命後の日本経済の分析、仮想通貨と日本経済のゆくえ、デジタル資本主義、米中冷戦などの分析・考察を行ってきている。


◇以下は、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議で議論したことをFISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.8-「反日」が激化する 韓国の「いま」と「今後」 4つのシナリオ』(9月26日発売)の特集『韓国の「安全保障」を分析する』でまとめたものの一部である。全3回に分けて配信する。



反日・反米、親中・親北の傾向が強い文在寅(ムン・ジェイン)政権は、THAAD配備後、米国と中国の狭間で双方からプレッシャーをかけられ、他方、日本に対してはレーダー照射問題を起こすなど、日韓関係を悪化させるような動きを見せている。文政権にはどんなイデオロギーがあるのか、そして、東アジアの安全保障の軸である日米韓の関係をどうするつもりか、考察する。


韓国は日本にとって抱き込んでおきたい相手


大統領が文在寅氏に代わったことが日米からの離反につながっているのかといえば必ずしもそうでない。

李明博(イ・ミョンパク)元大統領は2012年8月10日の竹島上陸後、「(天皇が)韓国を訪問したければ、心から謝るのがいい」「国際社会での日本の影響力は以前ほどでない」と発言した。

朴槿恵(パク・クネ)前大統領はアメリカの反対を押し切って2015年4月にアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を決定し、同年9月に開催された中国の抗日戦争70周年記念の軍事パレードに西側諸国で唯一参加した。日本との従軍慰安婦問題では、日韓合意に反する少女像を設置し、高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備についてアメリカに同意しながら、その配備に反対する中国に対しては、「米国には中国向けには運用しないように念を押した」とアピールするような日和見的な二股外交を展開した。

こうした過去を振り返ってみれば、現在の左派政権から保守政権に戻ったからといって、日米寄りになると考えるのは難しい状況といえるだろう。

2018年6月12日、アメリカは、初の歴史的な首脳会談を行ったシンガポールで出した米朝共同声明で「核のない朝鮮半島」について述べたが、そのことは「北朝鮮の核の廃棄」だけでなく「アメリカが韓国に提供する核の傘の廃棄」を意味している可能性がある。

アメリカが韓国の核の傘を廃棄すれば、在韓米軍の撤退、米韓同盟消滅にもつながりかねない。

アメリカとしては「アチソンライン(不後退防衛線)」さながらに、第一列島線での中国封じ込めという観点から、韓国が同盟から外れるという論があっても不思議でない。ただし、韓国がアメリカの同盟国でなくなることは、中国はもちろん、ロシアや北朝鮮の圧力を一手に引き受けることになる日本にとって重大事となる。現状の日韓関係を鑑みれば、安易な妥協が厳しい状況だが、韓国は日本にとって抱き込んでおきたい相手であることは間違いない。

実業之日本フォーラム編集部

実業之日本フォーラムは地政学、安全保障、戦略策定を主たるテーマとして2022年5月に本格オープンしたメディアサイトです。実業之日本社が運営し、編集顧問を船橋洋一、編集長を池田信太朗が務めます。

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