フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジ グループ代表 白井一成
アイスタディ代表取締役 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也
【フィスコ世界経済・金融シナリオ会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部から多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、アイスタディの代表取締役である中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまでにも今後の中国経済、朝鮮半島危機、第四次産業革命後の日本経済の分析、仮想通貨と日本経済のゆくえ、デジタル資本主義、米中冷戦などの分析・考察を行ってきている。
◇以下は、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議で議論したことをFISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.8-「反日」が激化する 韓国の「いま」と「今後」 4つのシナリオ』(9月26日発売)の特集『韓国の「安全保障」を分析する』でまとめたものの一部である。全3回に分けて配信する。
反日・反米、親中・親北の傾向が強い文在寅(ムン・ジェイン)政権は、THAAD配備後、米国と中国の狭間で双方からプレッシャーをかけられ、他方、日本に対してはレーダー照射問題を起こすなど、日韓関係を悪化させるような動きを見せている。文政権にはどんなイデオロギーがあるのか、そして、東アジアの安全保障の軸である日米韓の関係をどうするつもりか、考察する。
海空を中心に、日本を上回る軍事費となる可能性も
主要国の軍事費(GDP比較)の推移(米ドル換算、億ドル、SIPRI発表値、2017年)によれば、足もとの韓国の軍事費は、対GDP比では一定の比率を保っているものの、GDPが増加傾向であるため、軍事費の絶対額は増加傾向にある。
文在寅大統領は「(北朝鮮との)対話は圧倒的な国防力をベースにしなければ意味がない」として、軍事費を対GDP比の2.4%から2.9%へ増額する方針である。経済が今後も順調であるという前提であれば、日本の軍事費を上回る可能性がある。2017年5月の式典で文在寅大統領は「海洋強国を未来のビジョンにすべきだ」と述べ、大統領選でも「廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が成し遂げられなかった夢(戦時作戦統制権の返還)を私が全部やる」と語っている。
韓国国防部は(文在寅大統領も)、米国のミサイル防衛システムへの参加を否定し、あくまで独自システムの構築を強調しており、米韓の脅威認識の違いや中国の反発への懸念から、自主国防への道を歩んでいる。
今後は西北島嶼地域の対処能力の大幅拡充、戦時作戦統制権の移管に備えた上部指揮構造の改編、兵力削減と部隊改編の漸進的な推進、ミサイルおよびサイバー戦対応能力の大幅拡充に注力する方針だ。現存および潜在的脅威に対応するための能力を確保するため、イージス艦3隻の追加導入、次期駆逐艦・潜水艦の戦力化、中・高高度無人偵察機や多目的衛星の導入なども計画している。
空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しており、傾向として陸軍は現状維持もしくは縮小、海軍と空軍は軍事力を増強する状況になっている。
周辺国における主な軍事力は下の図のとおりで、韓国は陸軍兵力が比較的多い。それは徴兵制であることも理由にある。徴兵された人の給与は年間で20万~30万円程度で、日本の10分の1程度とみられている。日本との比較では、人件費が圧倒的に安いため、陸軍兵力への偏重により、海軍や空軍への資金が手薄になることはないように思える。
ちなみに、自衛隊の人件・食糧費の比率(物件費を除く)は46.3%で維持費を入れると60~70%となり、韓国と同水準であると想定される。近代化は日本が先行しているとされるが、韓国の軍事費が増えるにつれて、徐々に軍備における差は縮まると考えられる(こちらも経済が今後も順調という前提が条件となる)
(つづく~「韓国の安全保障を分析する vol.2 政治的には日米からの離反の動きも【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)