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2018.12.11 特別寄稿

金利上昇は長期投資家の買い場?
さわかみホールディングス代表 澤上篤人氏インタビューvol.3

澤上 篤人

◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の特集「さわかみホールディングス代表取締役 澤上篤人氏インタビュー」の一部である。全5回に分けて配信する。



ある程度の短期スパンで結果を求めがちな我々の投資。しかし10年後、20年後それ以上を視野に入れた長期投資の世界もある。その長期投資とはどういうものなのか、また長期投資家に必要な考え方、情報収集方法などはあるのか。「さわかみファンド」でその名を轟かせる日本における長期投資家のパイオニア、澤上篤人氏に長期投資の魅力、そしてその真髄・極意を尋ねた。


―もし金利が上昇し始めて、株価が下がるようなことがあれば、長期投資家にとっての買い場になるのでしょうか?

その通りです。金利上昇が及ぼす企業業績への悪影響を嫌気して株価が下落する局面があるでしょう。そのときこそが長期投資家にとっての「絶好の買い場」です。暴落したときこそ生活者にとって必要な企業を応援する。暴落しても敢然と買うのです。

企業側から見たときに、コンピュータを駆使して1秒間に何千回も取引するような超短期取引を行う投資家と、私たちのように安い時こそ、応援する気持ちで買う投資家のどちらがありがたい存在でしょうか。

極端なことをいえば、1秒間に何千回も取引するような超短期投資家が権利確定日の株式相場が閉まる瞬間にほんの数秒だけ株をもっていれば、株主として名簿に載り、株主としての権利を行使できます。このような人たちは、そのときさえ良ければいいわけですから、後先考えずに、「目先の配当増やせ」といったようなことを主張します。

業績が芳しくなければ、情け容赦なく売り浴びせます。株価が大きく下がれば、その企業は買収されやすくなる。そんなときこそ私たちは敢然と買う。すると、私たちが買った分だけ長期投資家に株主が入れ替わる。つまり、本物の株主に入れ替わるのです。

生活者にとって必要な企業であれば、なにかの拍子に大暴落してもいずれ株価は上がってきます。株価が上がってくると、その企業の株を買う「にわか応援」が増えてくる。そして、ある程度含み益が出たら応援を「にわか応援」をしている投資家に任せる——つまり利益確定するわけです。そして、また暴落したときに応援できるように備えます。

私は、これまで「安く買って高く売る」という株式投資のセオリーを愚直に繰り返してやってきただけです。「大河の滔々たる流れ」にしたがって投資をすれば、派手さはないが結果が出る。これはさわかみ投信の結果が証明しています。

企業を見ても、株主からの強いプレッシャーによりプロ経営者を雇う、短期的に結果を出そうとして苛烈なリストラにより一時的に利益を出そうとするようなことばかりする。だから企業の永続性がなくなりつつあり、資本主義の限界といわれるようになった。とはいえ、資本主義に代わる経済システムはありません。資本主義をマネーの横暴から脱却させるには、一般生活者が長期投資をして株主になり、もっと前面に出てくるしかない。

企業を短期指向の経営に追いやっているのは、機関投資家やヘッジファンド、投資ファンドですが、その彼らが手にしている資金の出元は、元をただせば年金や預貯金、つまり、私たち一般生活者のお金です。だからこそ、私たちが意識を変えることで、資金の出し先を考えて、行動を変えていけば、社会を大きく変えることができます。

年金は国の制度ですから、個人が勝手に資金の出し先を決めることはできませんが、預貯金は持ち主である個人の自由です。それを長期投資にまわせばどうなるのか。仮に個人の預貯金マネーの5%ほどが長期投資にまわれば、それだけで公的年金の株式運用額を凌駕します。つまり、私たち生活者が預貯金マネーを長期投資にまわせば、とんでもない力を発揮できるのです。


(つづく~「さわかみホールディングス代表 澤上篤人氏インタビューvol.4 投資は将来をつくっていくこと【フィスコ 株・企業報】」~)

澤上 篤人

さわかみ投信 会長
1947年3月28日生まれ。愛知県出身。71年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー、80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。96年にさわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立し、99年には「さわかみファンド」を設定。日本における長期運用のパイオニアとして名を馳せる。現在もさわかみ投信会長として長期投資の啓蒙活動を行いながら「カッコ好いお金の使い方」のモデルとなるべく財団活動にも積極的に取り組んでいる。ブログ「澤上篤人の長期投資家日記」も日々更新中。

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