⾔論・研究プラットフォーム「実業之⽇本フォーラム」は、米中対立構造をひもときつつ、台湾有事のリスクについて起こりうるシナリオごとに日本経済にどのような影響があるのかを試算し、研究報告書(ホワイトペーパー)を取りまとめた。同フォーラム編集部と東京理科大学の若林秀樹教授が共同で取り組んだ。
台湾の地経学的な重要性を語るには、まず⽶中の対⽴構造を明らかにする必要がある。第Ⅰ章で、⽶中の対⽴構造を地政学的な観点から描写し、その背後にある意図や建国以来の理念を考察した。
覇権を巡る綱引きの中で、⽶中が採りうる戦略オプションは、平時においては経済的⼿段に限定される。そこで第Ⅱ章では、独⾃に定義した「経済安全保障」に基づく⽶中の戦略オプションを提⽰した。併せて、覇権国家の経営モデルを国家全体のバランスシートに基づいて分析した上で、⽶中の覇権争いの構造を「システムダイナミクス」という⼿法で描いた。
覇権国同⼠の争いでは、経済的⼿段に限らず、軍事的⼿段を⽤いて⾃らの意図を達成させようとする場合もある。蓋然性は低くとも、⽣起した場合に甚⼤に影響を及ぼす「まさかの世界」を想定し、備えるためにシナリオ策定が必要である。そのため第Ⅲ章では、「シナリオ・プランニング」という⼿法を⽤いて、中国が台湾統⼀のために武⼒を⾏使するという極端な前提を置いて、烈度に応じた4つのシナリオを描き、⽇本・⽶国・台湾・国際社会それぞれがどう⾏動し、どのような影響があるかについて⽰した。
第Ⅳ章では、第Ⅲ章で提⽰した4つのシナリオごとに、台湾有事が⽇本の経済にどのような影響があるのか試算した。
本報告書は、資料請求いただいた方には無償でダウンロードいただける。実業之日本フォーラムでは、今後も地経学の視点から様々なテーマで研究・調査を進め、会員企業に詳細な研究成果をお伝えしながら、その一部を広く一般公開していく。