フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジ グループ代表 白井一成
フィスコIR取締役COO 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也
【フィスコ世界経済・金融シナリオ会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部から多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまでにも今後の中国経済、朝鮮半島危機、第四次産業革命後の日本経済の分析、仮想通貨と日本経済のゆくえなどの分析・考察を行ってきている。
◇以下は、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議で議論したことをFISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の特集『デジタル資本主義がやってくる ~パワーシフトの波に乗れ!~』でまとめたものの一部である。全8回に分けて配信する。
「10年後の日本未来予想図」という今号の特集テーマに際し、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議では、10年後の未来を考えるにあたり、その根幹を貫くキラーワードが「デジタル資本主義」であると考えた。「デジタル資本主義」とは何なのか。それが我々の住む日本に何をもたらすのか。同分析会議の主要構成メンバーの1人であるフィスコIR取締役COOの中川博貴氏に話を伺った。
デジタル資本主義とは何か?
アイデアとデジタル技術で、新しいビジネスを創出できる
従来の資本主義のように、場所の価格差がなくなり、搾取できる労働者は少なくなり、資本主義の限界といわれるようになっても、資本主義を代替するシステムは見当たらない。
そして、資本主義は「デジタル資本主義」と呼ばれる新たなかたちへと移行しつつある。デジタル資本主義とは、野村総合研究所代表取締役社長の此本臣吾氏らによって書かれた『デジタル資本主義』(東洋経済新報社)によると、「デジタル技術を活用して、差異を発見・活用・創出し、利潤を獲得することで継続的な蓄積を追求するシステム」である。
モノに満たされた先進国では、20世紀のように、大量の“モノ”を消費する社会ではなく、“コト”消費の重要性が増す。そうなれば、産業資本の必要性、つまりマネーの重要性は大きく低下する。モノをつくるときのように大規模な設備やヒトを必要としなくなり、むしろ、AIやデータ・アナリティクスといったデジタル技術の重要性が増すということだ。
世界の株式市場の時価総額ランキングを見てもその傾向は如実に見てとれる。産業資本主義時代に富を蓄えてきた大企業たちに代わって、GAFAと呼ばれる「Google(グーグル)」「Apple(アップル)」「Facebook(フェイスブック)」「Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)」といったデジタル・テクノロジーを駆使して成長した企業が、時価総額で世界トップに並ぶ。
グーグルやフェイスブックといった企業をアメリカの大学生が創業したことからもわかるように、大きな資本がなくてもアイデアとデジタル・テクノロジーによって、世界を変える新しいビジネスを創出できるようになった。GAFAは、検索や情報発信、買い物の履歴など企業に蓄積する膨大な個人データを事業に活用するプラットフォーマーとして、それぞれの分野で圧倒的な地位を築いている。GAFAの共通点は、第三者がビジネスを行うための基盤(プラットフォーム)を構築している「プラットフォーマー」として大きな力を持つ点だ。デジタル技術やデータ量の“差”が利潤の源泉であり、強さの根源になっている。
(つづく~「デジタル資本主義がやってくるvol.5 ITバブルで生き残った“本物”から今を見る【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)